罅割れた翡翠の映す影
目次|過去は過去|過去なのに未来
2003年11月05日(水) |
Road to ruin |
終わりが来る事位知っている。 翼は見えていても使える物じゃない。 缶切りが無いのに缶詰にされてるような物で。 自由なんてそんな物なのか。 気ままに飛んでいられる気がしてただけなのか。
『ハハオヤ』が限界のようだ。 僕の『オジイチャン』が倒れた。 永くないらしい。 …戻って来い。 …そう、言われた。
死刑宣告である。
僕の中のプログラムは、決して彼らに逆らえない。 つくづく、僕が人間の真似をした人形である事を思い知らされる。 人形は、それが己を破壊する命令であれ忠実に遂行する。 そうしなければ、もっと大切なものが壊れてしまうから。 刷り込まれた、感情。 彼らに見捨てられたら、永遠に孤独だ。 あの暗く寒い部屋で、独り泣きつづける翡翠の記憶。 誰も僕を見ない。 誰も僕を愛さない。 そんなことは無いと学んできたはずなのに。 心に刻まれた歯車が、 きしきしと音を立てて、 僕の意思とは無関係に行動を起こして行く。
あの家に、帰りたくない。 また、人形に戻り、白い笑みを浮かべ、僕の中の何かを確実に侵す。 もっと、自分で居たい。 生きて居たい。 自分の意志で世界と人間の意志を感じて居たい。
それでも、帰らなくちゃいけない。 見捨てられたらまた、あの暗い部屋に独り取り残される。 でも、見捨てられなくたって、あの家に帰るって事は …やっぱり、人形になった僕の中で独り取り残されるだけであって。
翡翠は、ずっと泣いている。 世界と、彼を置いて行った全てに呪いながら。 僕は、涙さえ流れない。 誰が悪い訳でもない。 僕が人形に戻るのは致し方無いのだろう。 反動は、あるだろう。 状況によっては、やはり何らかの幕を下ろさなければならない。 …ニコチンは、苦かったなぁ。 …ベンジンは、飲んでいる気がしなかったし。 …あの桜の木はまだ残っているのだろう。場所をいまいち特定出来ないが。 …刷り込まれた過去を振り切って何処かに行く事は可能だろうか。 …記憶は無くても僕を縛るこの呪縛を断ち切って?
感情と衝動がない交ぜで理性が利かない。 死の衝動が脳味噌の中をがんがんに揺らす。 でも、僕は僕のままでまだ生きて居たい、のに…
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