罅割れた翡翠の映す影
目次|過去は過去|過去なのに未来
『棄てないで』 ってずっと、小さなか細い泣き声で、叫ぶ子が居る。 僕がどんなに笑ってても、その声は僕の内臓を抉る。 『置いて行かないで』 どこに居るの? 誰に言っている? 『寒いよ』 どうやって暖めればいい? 『もうイヤだよ』 何が!? 『僕はただ、…』
…本当は、彼が誰で、何が言いたいのか、判る。 …判るけれど、認めたくない。叶わないから。その願いは。
彼は僕だ。 生まれた時から居たはずの彼で、僕だ。 なら、状況からして誰にこの言葉を言いたいのかは判る。 だが、少なくとも僕の頭の中で反芻して叶う望みじゃない。 言いたいのは少なくとも僕では在り得ないのだから。
そして、過去の変更を望んでも叶わない。 過去は変えられず、ただ反省材料として残されるモノだから。 記憶の中の不安定なログとして保存されるだけ。 いつ消去されるともされないとも判らない。
そんなモノが今更何故僕を煩わせる? 取り出したい時に取り出せないクセに突然フラッシュバックしてみたり? 忘れる方がこの苦痛よりマシだと言うの? 自分はとっくに諦めて僕に身体を押し付けたのに? 言いたい事が在るのなら自分で言えば良かったじゃないか! それが叶わなかったから?
それとも彼はただの残留思念なのか。 ずっと煮え切らないまま葬り去られた想い。 だとしたら僕の存在は彼と何の違いが在るの? 僕は何を叶えたかった?
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