罅割れた翡翠の映す影
目次|過去は過去|過去なのに未来
忘れたく、ない。
モノ忘れが激しくなってる。 周りから見たらいつもの話なのだけど。
僕である時間の事まで忘れ始めている。 元々物覚えは悪いけれど、…。
大切だった人間との思い出も忘れていた。 幾ら忘れたい事ばかりとはいえ、忘れたくない事だってある。
それなのに、 掌に掬った水の様に記憶が指の隙間からこぼれていってしまう。
誰かに忘れられるならまだ堪えられる。 でも、これ以上僕は忘れる事に堪えられない。
忘れられたなら、悲しむのは僕だけだ。 でも、僕が忘れた時に悲しむのは。 …僕じゃない。
もう僕達は沢山の事を思い出せなくしてしまってる。 その事に気付いたら悲しむ人間がいる。 嘘をつかなきゃいけない。でも。
本当は嘘なんかつきたくないんだ。
…だから、これ以上忘れたくない。 大切だった筈の人間を騙して生きていたくないんだ。
これは代償。罰。 本来在る筈の無い僕が生きる事の。
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