J (3.秘密の恋愛)
9. これからのこと (5)
「うん、ほんとに。気遣いができるいい人だった。 僕は直会の時、彼のおかげで救われたよ。」 「何を?」 「いやさ、僕は誰が誰やらで、右も左もわからなかったろ、 彼がこちらに、って言ってくれたからあそこに座れたんだ。 そしたら、君の隣の席だったんだけどね。」(参照こちら) 「あー、それで。」 「僕はあの時うれしかったよ。君に話ができるって思ってね。」 「うふふっ。そうですか?」
私がレイに話すことができてうれしかった、と聞いて、 レイはとてもうれしそうな表情をしました。
「そうさ、だって知らない人ばかりなんだもの。」 「うーん、そうでしたよね、ごめんなさい、私気がつかなくて。」
ちょっとしたひと言でレイはまたしゅんとなりました。 私は言い方がまずかったな、と少し反省しつつ。
「あ、いやぁ、そういう意味じゃなくって。」 「どんな意味なんですか?」 「えっと、ほら、君はそれどころじゃなかったから、さ。 そんなこと気にしないでいいんだよ。」 「ふぅん、。」
レイは思案顔。 私はうまい言い回しが利かなくて焦りつつ。
「つまりぃ、僕は君と隣り合わせに座れてよかった、これで君と話ができる、 と本当にそう思ったんだよ、ってこと、なだけ。ほんとだよ、他意はないよ。」 「、、はい。」
レイは私の言葉を確かめるようにして、そして頷きました。
「でさ、そこで、これからのこと、話したよね、。」 「ええ。」 「なんだっけ、それで?」
やっと話を本筋に戻した私でした。
・・
レイはシリアスな表情をになり、口を開きました。
「、、実は、父が、」 「ん? お父さんが?」 「父が、帰って来い、って言うんです、、。」
え!? どういうこと?
|