J (3.秘密の恋愛)
8. 誤解 (18)
しかし、、。 レイの彼氏は来ていないって、、。
いくらか、ほっとしたような、いくらか、拍子抜けしたような、 不安定な安定感が私の心に広がる。
そしてその安定感はすぐに揺るぐ。
なら私はどうなる? 誤解をされたまま、じゃないのか?
レイは自分の彼氏のことをお父さんに知らせていない。 お父さんは私が結婚していることを知らない。 となると、私が、そういうふうに見られかねない。
レイの母の臨終の夜、車でレイを送ってきた男。 いくら上司だからと言って、普通、そこまでするか、。
レイに対する恋愛の情があったからこそ、私はレイを自宅まで送ったのだ。(参照こちら) そのことを悟られてはいるのではないか。 そして、そのために、誤解が生じているのではないか。
それは、まずい、だろ、レイちゃんよ。。
「レイちゃん、あのさ、」、、、また、“あのさ”、だ! 「?」、、、レイは今度は硬い表情で。
「このままでは誤解されてしまう、。 お父さんに僕のことははっきりと伝えておいてほしい。 ただの君の上司、だってね。そして、結婚してるって。」
「それは、、。そんなこと、工藤さんの思い過ごしです。 誰も誤解なんてしていない、、。 かえってそんなふうに強調するのもヘンじゃないかしら。」
レイはこの時ばかりは語気を強めて言いました。 私はその剣幕に少し押されてトーンダウンして、、。
「強調することはない、ただ、万が一、って思うから、 さりげなく言ってくれるとありがたい、ってことさ。」
「万が一、って、何のことか、分からないわ。 万が一、があったって、私は構わないんだもの。」
万が一、があったって構わない、って? 何を君は言ってるんだ?
「あのね、レイちゃん、僕も君が何を言っているのか、分からないよ。 万が一、君が誤解されたら。君が困るだろうに、、。」
それを聞いて、レイはきつく私を見つめて。
「、、、。工藤さんは、、。」 「何?」 「工藤さんは、、何にも分かってない、、、。」 「何にも、?」
「そう、、。私の気持ち、何にも分かってないんだわ。」
私の気持ち、って、、!?
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