J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2004年05月06日(木)    「お母さん、死んじゃった。。」

6. 個人的な話 (16)


この俺がレイの恋人だったら!
すぐに駆け寄り傍らでレイを支えるのに!
レイの家族のために一肌も二肌も脱ぐというのに!

哀しみに沈む場あって他人の私。

それは我が身の立場を呪った瞬間でした。


暫くしてレイの父が電話から戻ってくる。
私はただ目礼をする。
レイの父もまた目礼して病室に入る。

バタとドアが閉まる。


家族を亡くしたんだ。
気など使ってられないよ。
俺は静かに立ち去るがいいんだ。

レイを送り届けるという俺の役割は果たしたんだ。
脇役は気づかれぬように消えるがいい。


私は、帰ろう、と決めた。
くるりと後ろに向き、歩き始める。

とその時背後にレイの呼び声。

「工藤さん、、。」

え?

振り返るとそこには泣きはらしたレイの顔。

「お母さん、死んじゃった。。」


、、、そう言いレイは私の胸の中へ。


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