6. 個人的な話 (16)
この俺がレイの恋人だったら! すぐに駆け寄り傍らでレイを支えるのに! レイの家族のために一肌も二肌も脱ぐというのに!
哀しみに沈む場あって他人の私。
それは我が身の立場を呪った瞬間でした。
暫くしてレイの父が電話から戻ってくる。 私はただ目礼をする。 レイの父もまた目礼して病室に入る。
バタとドアが閉まる。
家族を亡くしたんだ。 気など使ってられないよ。 俺は静かに立ち去るがいいんだ。
レイを送り届けるという俺の役割は果たしたんだ。 脇役は気づかれぬように消えるがいい。
私は、帰ろう、と決めた。 くるりと後ろに向き、歩き始める。
とその時背後にレイの呼び声。
「工藤さん、、。」
え?
振り返るとそこには泣きはらしたレイの顔。
「お母さん、死んじゃった。。」
、、、そう言いレイは私の胸の中へ。
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