J (3.秘密の恋愛)
4. 無常 (18)
一呼吸の後、レイは自分を確かめるようにうんと頷いてから、 「そして、」と言いました。
次の言葉を待っていた私は「そして?」と聞き返す。
「そして、。工藤さんは言ったの。 本当は君みたいな子と先に知り合いたかった、って。」
!
う、うそだ。そんなことを俺が言うわけが、!。
だが、、、。酔っていた。 もしや言ってしまったかもしれない。 な、何という罪作りなことを。
「工藤さん?」レイは甘えたような声で私に返事を求める。 私は辛うじて「そうか、、、。」と言う。
私は煙草に手を伸ばし、考え込むように一服つけて。 しかし言葉は見つからない。
レイが続ける。 「私は信じたかった。たとえ工藤さんが酔って言った言葉でも。」 「そうか。」 「だけど、そうだとしても何も変わらないの、分かってた。」 「そうか。」 「でも。うれしかったのよ。とっても。」 「そうか。」 「そうか、そうかって、もう、、、。思い出せましたか、この話。」 「あ、ああ、うん、、、。」
「憶えていらっしゃらないのね。」 「い、や、なんというか、すまない、っていう気持ちでいっぱいになってしまって、。」 「、、、。」
・・
それは僕の本心だ。レイちゃん。 僕は君が好きなんだ。 その時言った言葉にうそはなかった。 君と先に知り合いたかった、それは今でもそう思うよ。
だけどね。 それを肯定したらいけないんだ。 何でか分からないが、いけないんだよ。
僕には友美さんがいる。 僕は友美さんを幸せにするために生きているんだ。 そう決めたんだよ。
だから。
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