J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2004年01月11日(日)    此処にいるのは偶然ではない。

J (3.秘密の恋愛)

4. 無常 (5)


「でも、いいんです、もう、、、、。」
「うーん、それでは僕も消化が悪いよ、ね、話して、レイちゃん。」
「本当にいいんです、これ以上話すと、辛くなるもん。」

辛くなる!
おいよぉ、レイちゃん、何を言っているんだよぉ、、、。

「ん、、、、そうか、辛くなるか、じゃぁ、いいよ、」
「、、、すみません。」
「なんで謝るの、何も悪いことしてないのに、」
「いえ、ヘンな事聞いちゃって、」
「何、構わないよ、」


再び、少しの間。



レイもかなりアルコールが回っていたのです。
疲労、睡眠不足、出張先の開放感、そして夜景、、、
レイの心の扉が緩く開いて心のうちの想いが溢れて言葉になっていました。

思いもかけないその言葉の連続に、私も揺れ動き、
ついには私も心の扉を開いてゆくのでした。

知らぬ人が見れば、親密に話す恋人たちに見えたでしょう。
それほど近くに私とレイはお互いを置き追憶の糸を辿っていたのでした。

あの夜。
あの時。
あの頃。

何度も振り返り想い出し、言葉を重ねて。

そして今。
私とレイは此処にいる。

全てが繋がっているようで、繋がっていないようで、
ただ此処にいる自分達ふたりだけが存在しているような、
そんな錯覚をすら持ってしまう、不思議な心理状態になって。


此処にいるのは偶然ではない。

こうなるべくして此処にいる。

そんなふうに考えられる、ふたり、でした。


そして哀しいことには、私とレイはそれ以上も以下もない、関係でした。
だから、堂堂巡りばかり繰り返す。
肝心なことには触れられず。

酔ってこそ。

酔っても尚。


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