J (3.秘密の恋愛)
2. 出張 (1)
置かれた立場は営業の統括者。 役職は課長補佐。 責任は役員並。 ただし人事権も決済権もない。 つまり社外では責任が重く、社内では軽んじられた立場。 それが当時の私でした。
その私にとって唯一息を抜けた機会が出張でした。 正当な理由さえあれば自由に時間と金を使えました。 正当といってもこの新しい事業において、 仕事の内容を把握している者が社内にいないこともあって、 私にはいくらでももっともらしい理由をつけることができました。
出張中私は好きに遊び好きに飲み食いし好きに過ごしました。 国内海外問わず。
ただし会社の金を流用して遊んだ、ということではありません。 節度ある範囲内で自ら律して必要最低限ということです。
仕事を成功させるためにはある程度の心の余裕が必要。 時間も金も。 そして俺は俺の力でこれだけの利益を会社にもたらしている。 そういう自信もあって。
ということです。
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6月はすぐにやってきました。
私と宮川、安田、初出張のレイ、 そしてお目付け役の鏑木さんは、 夕方の新幹線で大阪へ向かうことになりました。
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