J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年09月28日(日)    オレはそんな下心があってレイを出張に出すんじゃないぞ!

J (3.秘密の恋愛)

1. 総合職 (16)


今思い出せばそれは羞恥心であったのでしょう。
オレの心の奥底には何かそういう下心があった、の、か。

堂々たる人生を歩むことがモットーの私にとって、
こうした下心は忌み嫌うものでありました。
真っ直ぐに、人に後ろ指を差されることなく、常に自分で納得できる、
自分に対して堂々と胸を張れる、青き道を歩む、
これが私の信条であり、私の生きる指針でありました。

そうした私にとってこうした猜疑の目に晒される事は本意ではなかった。
だから、カッと頭に血が上った。
何だと!と思った。


、、、しかし、
やはりそれは自分では認めたくないことを指摘されたために起きた羞恥心であった、
そのように思われてならない、今は、ですが。


・・


「お言葉ですが。専務。それは私の品格を疑っての問いかけですか?」

私は感情を抑えつつ、けれど厳しい口調で聞き返しました。

私の険しい表情に専務は語気を荒げて言い放つ。
「君、私に意見する気か、おい、」

ぐっと私は専務を睨み、専務は何だという目で睨み返す。

部長が咄嗟口を挟む。
「専務、すみません、あとで私がよく言い聞かせます、
 そら、工藤、何故に樋口君が出張に必要なのか、君、説明したまえ。」

営業担当専務がそれに続けて言う。
「早く説明しなさい、君はそのためにここに来たんだからな、」

(いつもながら優しい上司達だ、)


私はすうっと息を吸って熱弁を振るいはじめました。

よくもここまで舌が回るものだと自分でも思うほどに、
最初から最後まで息も切らずにとうとうとレイの出張の意義を説明しました。


オレはそんな下心があってレイを出張に出すんじゃないぞ!

こら、聞け!

こう言う理由なんだ!

私は熱意の塊となって説明しました。


話し終えた後一切の質問もなく、私はその席を後にした。


会議室を出た私は何故か消沈していました。

何故か、、、。



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