J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年09月17日(水)    レイは私にタメ口を利くことすらありました。

J (3.秘密の恋愛)

1. 総合職 (9)


「レイちゃん、話がある、」

私はレイをつかまえてさっそく話すことにしました。
これはいい話だ、すぐに伝えて意思の確認をしたほうがいい。
そう思ったのです。

レイはいつもの調子で、「はい、なんでしょう、」とにこやかに返事をしました。

「あー、ここでは何だ、ちょっと会議室へ行こう、」
「あ、はい、」怪訝そうな顔をするレイ。
「なに心配するな、いい話だ、」
「何か持っていったほうがいいですか?」
「いや、何も必要ない、話だけだから、」

会議室へふたりきり、よく打ち合わせで使うのでとりたてて珍しいことではありません。
書類を作るためにレイと私は何時間もふたりきりでこの会議室に篭ることもありました。


3年のうちにレイは成長しました。
入社当時のレイと違い、営業部の雰囲気にも慣れ、
物怖じすることもなく自分の意見も言うようになり、
表に出て人に接することにより社交的に振舞うことも覚え、
仕事を自分のものとできたことから自信も持ち、
なんでも進んでことに当たる有能な社員に育っていました。

ただし。
私の前だけでは相変わらず、入社当時のレイでした。
私の一挙手一投足を注視し、私が次に何を考え何をするかを必死で捉え、
私の指示には従順に従う私のアシスタントとしてのレイでした。

とはいえ、堅苦しい関係では決してありませんでした。
確かに入社当時は年齢的な開きもありましたし、
上司と部下です、話す言葉は敬語が主だっていたものです。

それが3年間毎日一緒に仕事をしているうちに、
そうした上下関係はふたりの間に薄れていきました。
立場は上司と部下、仕事中はパートナー、そんな感じです。

レイは私にタメ口を利くことすらありました。
もちろん冗談めいた時にです。
ふたり以外の第3者がいる場合はキチンと礼節をわきまえていました。


そうしたレイは私にとって気安い存在でもありました。

どこまでも私に敬語を使う私の妻の友美さんにはない気安さ。



、、、だからと言ってどうということはないのですが。



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