J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年06月22日(日)    言ってしまった手前、もう引き下がることはできない。

J (2.結婚)

12. 指輪 (7)


そもそも私は指輪をしないことを持論にしていたわけではありません。

指輪を外したのはレイへの手前、そうせざるを得なかったからです。(参照こちら
私は自分に正当性を与えるために“営業マンはかくあるべし”という、
ツジツマ合わせのような理屈を持ち上げてレイを納得させたのです。

つまりもともと深く考えていたことではなかった、、、。

そこへ持ってきて杉野佳菜が私に何故指輪をしていないのかと聞くものですから、
私は酒の力により饒舌になって、それがあたかも自分のポリシーとして力説した、
それだけのことでしかなかったのです、私にとっては。


実は、正直に言えばもうひとつ理由がありました。

それはレイがオフになって再び指輪をしていた、(参照こちら
それで私は指輪をしないことに意固地になった、
つまり、、、

オレが指輪をしていないのは、レイ、君とはまったく無関係のことであって、
君が指輪をしていようがしていまいがオレは仕事中はしないのだし、
尚且つ、オフタイムと言えども営業マンたるオレは指輪なんかしないのだ、

、、、と言う意味を込め話していたのです。

杉野佳菜を通してレイに言い聞かすように。



このことを掘り下げて考えてみると、この感情もジェラシー、なのでしょう。

君はいったい?
君の新しい恋人って?
その指輪はその彼氏との絆なの?

考えまい、そうする意思が私を逆に反対の立場に置こうとする、
それによりバランスがやっととれるかのように揺れる自己であったのです。


・・

言ってしまった手前、もう引き下がることはできない。
矢崎が反対の立場で口を挟むのであれば尚のこと。

そして酒が入っている。

まして、

レイも聞いている、、、。


矢崎が話を続けました。

「工藤の言い分も分かるが、じゃぁ、友美ちゃんはどう思うかな、
 或いは友美ちゃんが指輪を外していたら工藤はどう思う?」


どう思う?、、、ったって、

友美さんは営業マンじゃないんだぜ、

それって詭弁じゃないのか、矢崎よ。



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