J (2.結婚)
12. 指輪 (8)
だいたいオレだってトモミさんに悪いと思ってたんだ。(参照こちら)
それを矢崎の奴め〜、人の心のうちを知らないで、。
「どう思うもこう思うも、トモミさんは仕事をしていない。 それをオレと一緒にして考えるのはおかしいと思うよ、オレは。」 「だから、もし、だ、友美ちゃんが、だ。仮定の話でどうよ、」
「仮定の話、だったら、オッケイだ。オレはどうとも思わない。 つまりトモミさんがパートかなんか知らんが働いてだな、 そこでの規則で指輪を外さなくちゃならん、そういうケースならな。」
、、どうだ、理路整然としてるだろ。 だから営業マンであるオレは指輪を外したんだ。悪いか。
「なるほど。しかし、当社ではそんな規則はない。現にしている人もいる。 そうなると愛情の問題になってくると思うぜ、指輪をとるか、見栄をとるか。」
(見栄!)
「何言ってるんだ、矢崎。話が突拍子もなく飛躍してるぜ。 どこから愛情の問題になるんだ、え?、何で見栄なんだよ。」 「工藤、さっき佳菜ちゃんになんて言った?カッコ悪い、そう言っただろ。 カッコ悪い、イコール見栄だ。オレはそういうのは好かん。」(参照こちら)
矢崎、どうだと言わんばかりの顔。 むっとして言葉に詰まる私。
矢崎が話を続ける。 「オレはきっと指輪は外さない。たとえ規則があってもね。 オレと彼女はパートナーなんだ、お互いに上も下もないパートナー。 指輪をしていることは既婚者だっていう証しでもあるしな。」
くっ、カッコつけやがってぇ。 オレだってそう言いたいよ。
すかさず黙って話を聞いていた杉野佳菜が口を開きました。 「私もそう思います、だって結婚指輪をしていれば浮気もできないでしょ。 さすが矢崎さんですねぇ、私、尊敬しちゃうかも、です。」
私は慌てて弁解しました。 「いや、何度も言うようだけれど、オレが指輪を外したのは、 仕事のためなんだから、それはトモミさんも納得してもらって、だな。。」
、、、もじもじ嘘をつく私。 形勢はまったく悪し、です。
・・
でも、待てよ。一理ある。
もしかしたらオレはレイを意識して指輪を外したんじゃ、、、。 つまり、君の前ではひとりの男、みたいな、、、。
もしそうだとしたらトンでもない奴だ、オレ。
あ〜あ、、ここらへんで降参しちゃおうかな。 オレが間違ってました、とか言っちゃえば、ここは丸く収まりそうだしな。
うん、そうしよう。
と、私が頭を巡らしているうちに、今度は鏑木さんが口を挟みました。
「指輪なんかしていたらみっともない、そりゃそうだ。」
うう、話がこじれそうな予感。
また随分酔っぱらってきちゃっているし、、、
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