J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年06月23日(月)    指輪をしていることは既婚者だっていう証しでもあるしな。

J (2.結婚)

12. 指輪 (8)


だいたいオレだってトモミさんに悪いと思ってたんだ。(参照こちら

それを矢崎の奴め〜、人の心のうちを知らないで、。


「どう思うもこう思うも、トモミさんは仕事をしていない。
 それをオレと一緒にして考えるのはおかしいと思うよ、オレは。」
「だから、もし、だ、友美ちゃんが、だ。仮定の話でどうよ、」

「仮定の話、だったら、オッケイだ。オレはどうとも思わない。
 つまりトモミさんがパートかなんか知らんが働いてだな、
 そこでの規則で指輪を外さなくちゃならん、そういうケースならな。」


、、どうだ、理路整然としてるだろ。
だから営業マンであるオレは指輪を外したんだ。悪いか。


「なるほど。しかし、当社ではそんな規則はない。現にしている人もいる。
 そうなると愛情の問題になってくると思うぜ、指輪をとるか、見栄をとるか。」

(見栄!)

「何言ってるんだ、矢崎。話が突拍子もなく飛躍してるぜ。
 どこから愛情の問題になるんだ、え?、何で見栄なんだよ。」
「工藤、さっき佳菜ちゃんになんて言った?カッコ悪い、そう言っただろ。
 カッコ悪い、イコール見栄だ。オレはそういうのは好かん。」(参照こちら


矢崎、どうだと言わんばかりの顔。
むっとして言葉に詰まる私。


矢崎が話を続ける。
「オレはきっと指輪は外さない。たとえ規則があってもね。
 オレと彼女はパートナーなんだ、お互いに上も下もないパートナー。
 指輪をしていることは既婚者だっていう証しでもあるしな。」

くっ、カッコつけやがってぇ。
オレだってそう言いたいよ。

すかさず黙って話を聞いていた杉野佳菜が口を開きました。
「私もそう思います、だって結婚指輪をしていれば浮気もできないでしょ。
 さすが矢崎さんですねぇ、私、尊敬しちゃうかも、です。」

私は慌てて弁解しました。
「いや、何度も言うようだけれど、オレが指輪を外したのは、
 仕事のためなんだから、それはトモミさんも納得してもらって、だな。。」


、、、もじもじ嘘をつく私。
形勢はまったく悪し、です。


・・

でも、待てよ。一理ある。

もしかしたらオレはレイを意識して指輪を外したんじゃ、、、。
つまり、君の前ではひとりの男、みたいな、、、。

もしそうだとしたらトンでもない奴だ、オレ。


あ〜あ、、ここらへんで降参しちゃおうかな。
オレが間違ってました、とか言っちゃえば、ここは丸く収まりそうだしな。

うん、そうしよう。


と、私が頭を巡らしているうちに、今度は鏑木さんが口を挟みました。

「指輪なんかしていたらみっともない、そりゃそうだ。」


うう、話がこじれそうな予感。

また随分酔っぱらってきちゃっているし、、、



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