J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年06月20日(金)    工藤さん、結婚指輪はどうされたんですか?

J (2.結婚)

12. 指輪 (5)


歩きながら矢崎と話す私。

「で、工藤、新婚旅行はどうだったんだい?
 予定より早く出社するっていうから、何かあったのかと心配したぞ。」
「いやさ、トモミさんが実は、」

実は妊娠の兆候が見られて、それで大事を取って予定を切り上げた、
私は例に習ってそういうふうに答えておきました。
決して切迫流産で、なんてことはおくびにも出さないようにして。

「そっかぁ。それでかぁ。ん。おめでと、な、」
「ありがとう、ま、秘密にすることでもないが、ひとまず内密に頼むよ。」
「分かった、分かった。でも。そっかぁ、工藤がねぇ。人の親にねぇ。」

しげしげと私の顔を窺う矢崎です。
ふ〜ん、という顔で。
お前がねぇ〜、という顔で。

私としては友美さんの切迫流産が気がかりで、
妊娠についての話題はあまり気の進まない話題でした。

ですから私はそうした矢崎の興味深々の態度には気づかぬ振りをして、
「ところでどうだい、順子さんとのことは?」
と矢崎のフィアンセに話題を振り会話を切り替えたりしたものでした。



やがて店につき、2階の座敷に上がり、
じゃぁ、飲むべ、と鏑木さんの音頭で飲み始める。

私は不在中に負担を掛けてしまった皆に礼を言い、
皆は私の結婚についての話題で盛り上がる。

そのうちに皆して出来上がってきて、思い思いに話が弾み、
私もたいそう饒舌になってきて軽口を叩くようになっていきました。


しばらくして杉野佳菜が私の隣に来ました。

そして私に酌をしながら言うのです、、、

「工藤さん、結婚指輪はどうされたんですか?、」


指輪!


私はレイの方を見ました。


、、、レイは私を見ていました。



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