J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年06月16日(月)    やって当たり前、出来て当たり前。

J (2.結婚)

12. 指輪 (2)


私は自席につくなり仕事を始めました。
レイは私の隣りで私の補佐的な仕事をする。
変わりないふたりの日常がいきなり始まりました。

「午前中に事務処理をし午後から営業先に挨拶回りをしよう。」

私はレイにそう言って、てきぱきと仕事をこなしていきました。



午後になり外出。
私の不在中レイに営業を任せていたため、
私は挨拶を兼ねてレイを連れて出かけました。

ただし。
商談中はもちろん、移動中も、私は一切私的な会話をしませんでした。

レイがひと言だけ、「新婚旅行はどうだったんですか?」と聞いてきましたが、
その際も「ま、予定通りだったよ、」とだけ言って話を続けませんでした。

私の口調が強い拒否の語感を与えたのか、それっきりレイも口を閉ざしました。

話すことは仕事のことだけ。

そんなふたりでした。



レイはしっかり仕事をしていました。漏れなく、客先の評価も上々でした。
「工藤さんよりレイちゃんのほうがいい。」
などと軽口を叩く客先もあったほどでした。

レイは私に誉められたそうな顔をしていましたが、私は誉めませんでした。

やって当たり前、出来て当たり前。

私はそんな表情でレイを見て返したものでした。


・・

夕方6時近くに帰社。

帰るなり矢崎が寄って来て私に言いました。

「よ、お疲れ。一応予約入れといたから、駅前の焼き鳥屋。」
「?」
「メンバーはうちのスタッフと、あと安田と杉野さん。
 いやさ、そんな話していたら安田がたまたま通りかかって、
 一緒にいいですか、工藤さんの話、聞きたいっす、っていうもんだからさ。
 杉野さんはレイちゃん一人じゃかわいそうだから、オレが誘っておいた。」

そうか、今夜、飲もうって言ってたんだ、、、。(参照こちら

「いいよな、それで。」矢崎が念を押す。
「ああ、いい、ありがとう。」私は答える。


ふっと脳裏に友美さんの顔。
次に義母の顔、、、。


いや、これも仕事だ。

私はかぶりを振って頭を切り替えました。


そして目をやると私の隣りにはレイがいる。



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この物語はフィクションです。

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