J (2.結婚)
2. 引越し (10)
「お待たせ、お待たせ、いやあ、待たせたなあ〜、悪い悪い、」
ちょうどその時にドアが開き鏑木さんとレイが戻ってきました。
私は内心ほっとしました。
が、、、
レイのことを話題にしていた私たち3人、 なんとなく話が中途半端に終わった感が否めずあり、 顔を見合わせて黙りこくってしまいました。
鏑木さんが言いました。
「どうした、3人とも、ぼけっとしちゃって、 さあさ、飲もう飲もう、待たせて悪かったな、」
私は「ずいぶん時間がかかりましたね、」と聞きました。
「道に迷っちゃってさ、それとな、これも買ってきた、」と鏑木さん。
「なんすかそれ?、」と私。
「おでん、」と鏑木さん。
「おでん?、」と今度は矢崎。
「やっぱ、おでんだろ、オレ、好きだから、」と鏑木さん。
「はあ、やっぱ、そうっす、よね、」とトリは宮川。
天性の明るさを持つ鏑木さんのこのタイミングの妙があって、 私たちは自然と笑みをこぼしたものです。
座は持ち直しました。
レイは、一緒になってクスリと笑い、鏑木さんの隣に座りました。
そこは、、、私の真ん前でした。
レイは一瞬、私と目を合わし、すっとそらした、、、。
私たちはまずビールを開けました。
私は「今日はどうもありがとうございました、」と杯を上げ、 ほかのみんなは、 「この度はどうもおめでとう、」というようなことを口々に言い、 こうして結婚前祝いと称した昼間の酒宴が始まりました。
そして、アルコールが入るにつれ、
私、矢崎、宮川、、、
先ほどレイの話をしていた3人の深層心理が働いて、
自然と結婚談義になってゆくのです。
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