J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年02月01日(土)    結婚している鏑木さんはよく私をだしに使いました。

J (2.結婚)

2. 引越し (4)


鏑木さんはもともと経理部の所属でした。

新規事業部を立ち上げる際に数字の強い人間を一人セクションにおこうと、
そういう役割で配属されたスタッフでした。

そうとは言っても机に座ってばかりいるわけにもいかず、
いつしか在庫管理を主に見てもらうことになっていました。

当時の私が30歳だったとすると、
一回り上の鏑木さんは42歳であったはずです。


鏑木さんの奥さんも、友美さんとちょうど同じく、八つ年が離れていました。

私と友美さんと同じ社内恋愛で、そして同じく結婚に際して苦労した人でした。


私は友美さんのご両親になかなか結婚の許しを得られずに苦労していた頃、
鏑木さんにはいろいろとアドバイスや励ましをして貰って、
随分とお世話になったものでした。


鏑木さんもよくお酒を飲みました。

女遊びもよくされました。


鏑木さんと私は若き頃よくつるんで繁華街を飲み歩きました。

私が20代の盛りの頃です。

飲めば必ず鏑木さんは私を如何わしいところへ誘い、

私も酔った勢いでそういうところにも顔を出し遊びもしました。


結婚している鏑木さんはよく私をだしに使いました。

私は必ず鏑木さんの奥さんに電話をして、アリバイ作りをしたものです。

「今夜は仕事の都合で遅くなります、、、僕と一緒です。ハイ。」


最初のうちは効果があったのですが、
しばらくするうちに、私は鏑木さんの奥さんから、
“工藤が亭主を誘っている”というふうに思われてしまいました。

(ヌレギヌだよ〜、どっちかっていうと鏑木さんが誘っているのに〜)


ま、先輩後輩の間柄、ショーガナイっすけどね。


鏑木さんは奥さんにめっぽう弱い、

だから外で気晴らしをする、

そんな人でした。


でも、とってもいい人です。



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