J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年01月31日(金)    アナタはどんな家庭が理想ですか?

J (2.結婚)

2. 引越し (3)


同僚の矢崎は私と同年で翌年の6月に結婚するフィアンセがいました。

私はしばらく前にそのフィアンセを矢崎から紹介されていました。

そのフィアンセと矢崎も同年でした。
大学時代から長く付き合ってのゴールイン、ということでした。



ある晩矢崎は私と酒を飲み、私たちは酔ってこんなことを話しました。


矢崎は言いました。
「工藤はいいな、若い嫁さんを貰って、一種の犯罪だな、」

「何を人聞きの悪い、オレはだな、いいかぁ、
 プロポーズするまで友美さんに指一本触れなかったんだぞ、」

「ふ~ん、アンビリーバブルなやっちゃな~、あのクドウクンがなぁ、」

「そうそう、オレも不思議、でも、こうなった、」


「では、そのクドウクンに質問、アナタはどんな家庭が理想ですか?、」

「どんな家庭だって?、なんだい、いきなり、、、
 そう言うときはまず自分から答えよ、ヤザキクン。
 君は順子さんと一緒になって、いったいどんな家庭を作りたいんだい?」



順子さんというのは矢崎のフィアンセの名前でした。

矢崎はちょっとテレ笑いをしてから、急に真顔になって言いました。

「オレはね、何でも話し合って相談しあえる家庭を理想とする。
 家庭のことばかりじゃなく、仕事のことも含めて全てを二人で考える。
 順子はオレの“奥さん”ではなく、人生の“パートナー”として考えている。
 そんなカンジかな、どうだい?、この考え方。」

私は即座に答えました。

「ステキな関係じゃないか、順子さんは聡明だし教養もある。
 君の理想とするところにぴったりの人じゃないか、。
 ま、だから結婚するんだろうがな、つまり、のろけかね、キミ~。」


矢崎は再びテレ笑いをして、「まあ、まあ、」と言いました。
そして私に聞きました。

「で、工藤はどうなんだい?、友美ちゃんと、」



私は、、、

私は、矢崎のようにはできないな、と思いました。


話し合うと言っても友美さんと私は8歳も離れている。

30歳の私と22歳の友美さん。

同年の矢崎と順子さんのようには決していかない。


私は少し考えましたが、何も思いつきませんでしたので、
このように答えたのです。

「オレは、普通の家庭であればいい。
 トモミさんと、生まれてくる子どもたちが平穏に暮らしている家庭、かな、」


それを聞いて矢崎は言いました。

「工藤らしいな。その考え方。」

「そっか?」

「うん、友美ちゃんは幸せになるよ、きっと、」

「そっかな、そうだといい、それがオレの希望だな、結婚に際しての、、、」



友美さんの妊娠の事実を知ってから、

私にとって友美さんは私の中で特別の存在になっていました。


恋愛や結婚とは次元の違う特別の存在者、

恋人、婚約者、奥さん、という位置付けではなく、

私の子どもを生んでくれる人、

そして、、、

私と共に、その子どもを育ててくれる人、

私はそういう認識を友美さんに持つようになっていました。


私を含めた結婚生活、家庭、というよりは、

友美さんの生活、家庭、を第一義に考える、

そんな私だったのです。



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