J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年01月28日(火)    今度の時は、、、 できるだろうか、、、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (17)


翌朝。

私は時間どおり友美さんに4時半に起こされました。

階下に下りると既に朝食の準備がなされており、
友美さんは甲斐甲斐しくキッチンに立っておりました。


「おっはよっ、早いね、大丈夫?、」

私は元気よく友美さんに声をかけました。

友美さんはニッコリして、
「おはようございます、よく寝られまして?、」と言いました。

「うん、おかげさまで、、、でも、夜中に誰かにオコサレタヨウナ、、、」
私はちょっぴりおどけてそう言いました。

友美さんは顔を赤らめました。そして、
「ごめんなさい、疲れていたのに、、、」と申し訳けなさそうに言いました。


そんなことはない、

私はそう言う顔で首を振りました。
そして友美さんを後ろから抱きしめて、「今度ね、」と優しく囁きました。

友美さんははにかんだような表情をして、ウン、と首を縦に振りました。



今度ね、、、か、


今度の時は、、、


できるだろうか、、、


私は一瞬懐疑的にそう思いました。

子どもができたことを聞いて以来、
私は友美さんに対してそういう気にはなれなくなっていました。

そのことは友美さんには一切話しませんでしたが、
その日以来、私たちはセックスレスの日々を過ごしていました。



今度の時は、、、できるだろうか、、、


しかし私は、いつまでもこれではいけないとも思いました。

そして、今度の時はきっと必ず、と強く心に言いつけたのでした。



私は友美さんの用意してくれた朝食をとり、
友美さんの用意してくれた手作りの弁当を持ち、
一番列車に乗り込むために早々に友美さんの実家を後にしました。


友美さんは駅まで見送りに来てくれました。


別れ際、私は友美さんに言いました。

「いろいろありがとう、ご両親によろしく、ね、」

「うん、いってらっしゃい、気をつけてね、」

「オッケイ、君も身体、大事にして、な、」

「はい、」


私は片手を上げて、「じゃ、」と言って改札口の中に進みました。

そして思い出したかのように立ち止まり、振り返って、

「今度ね!」

と、友美さんに声を掛けました。


友美さんはまた、はにかんだような笑顔で、ウンウン、と何度も頷きました。

そうした友美さんをまた私は愛しいと思いました。


私はすっかり自分を取り戻せました。


これで、いいんだ、

私には友美さんがいる、

これで、これでいいんだ、、、


一番列車の車窓から、

朝日に浮かぶ町並みを眺めつつ、私はそう呟きました。



それは、結婚式まであと僅か、というある日の出来事でした。




(1.結婚前夜、の項 終わり)


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