J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年01月19日(日)    来て、いきなり帰る、という話

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (8)


もう8時近くになって、列車は友美さんの住む町に到着しました。

駅には友美さんが迎えに来てくれていました。


思っていた通り、友美さんは優しい笑顔で迎えてくれました。

思っていた通り、友美さんはまた喜んでくれました。


そうなのだ!

この人は私の子どもを産んでくれる大事な人なんだ!

私はこの人を、大切にしなくっちゃ!

私はこの人を、幸せにしてあげなくっちゃ!


友美さんはにこにこして私に話し掛けてきました。
「純一さん、おつかれさま、びっくりしたわ、急で、どうしたの?」

私もまたにこにこして答えました。
「なんでもない、でも、なんだか急に顔を見たくなって、さ、」


友美さんは言いました。
「夕ご飯、まだでしょ?、うちで一緒にご飯食べましょって、
 お母さんと話していたの、いいでしょう?」

「う、うん、それこそ急でワルイなぁ、お母さん、怒ってないかい?」

「ううん、そんなことないわ、さ、行きましょ、」


私は、、、

友美さんの顔を見たら、とんぼ返りするつもりでした。



そのため私は、いささか、困惑しました。


こんな時間に伺ったら失礼だろうに、、、。



しかし、準備されているというものを、

ここでまた無下に断るのもよろしくないと思いましたので、

では軽くご挨拶程度して帰ろう、

と心に決めて友美さんの実家に向かいました。



友美さんの実家は商店街でご商売をされており、
毎晩午後7時に店を閉めて、
それから食事をされることになっていました。

私がお邪魔をすると、もう食卓には食事の準備ができていて、
私の到着を皆で待っていた様子でした。

私は恐縮して、「どうも、急で申し訳ありません、」と言うと、
友美さんのお父様が、
「そんなことありませんよ、もうすぐ他人じゃなくなるのだから、
 どうぞ、ゆっくりして行って下さい、」
と言ってくれました。

ですが時間も時間です、私は内心、
(これは困ったぞ、ゆっくりしていたら帰りの電車がなくなっちまう、、)
と思いましたので、
「いえ、お父さん、今日は急だったので、余りゆっくりも出来ないのです。」
と言ってしましました。

友美さんのお父さんは怪訝そうな顔をして、
「何かこれから用事でもあるんですか?」
と聞かれました。

「いえ、用事はないのですが、電車がなくなってしまうと、、、」
(明日は会社ですし、、、)

私が言い訳がましく話をしていると、友美さんのお母様が、
「工藤さん、来て、いきなり帰る、という話は失礼な話ですよ、
 それも、こんな時間に、、、お父さんはあなたをお待ちしてたんですよ、」
と、おっしゃいました。

「は、はい、」(すみません)

「せっかくですから、ゆっくりしていらして下さいね、
 結婚式もあと僅かなのですし、友美と話すこともあるでしょう、」

「はあ、」(でも、明日も会社が、、、)

「工藤さん、今夜は泊まっていったらいかがです?
 ここから通勤している人もいますよ、朝の5時の電車もあるのですよ、」

「はあ、」(どうしよう、、、)

「友美だって、毎日寂しい思いをしているんですよ、
 もう、一人じゃないんですからね、少しは思いやってあげて下さいね、」

「はあ、」(いえ、いつも、思いやっているつもりですけど、、、)

「そうと決まったら、どうぞ、ゆっくり召し上がれ、
 といっても、急に来られたからあり合せのものしかないんですよ、
 今度からは早目に連絡してから来て下さいネ、」

「は、ははー、すみません、」(なんなんだよ〜)

「そうそう、ご実家にお電話されたらいかがです?
 今夜はこちらに泊まること、早目に連絡しないとご心配なさるわよ、」

「は、はい、じゃ、ちょっと、電話、お借りします、、、、、」



こうして私は、

友美さんのお母様にポンポンと話を決められて、

今夜は友美さんの実家に泊めていただくことになりました。


私はなんだか面白くなかったです。



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