J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年01月10日(金)    私は卑怯なウソをつきました、、、 《第一章 新入社員 終わり》

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (17)


翌朝。

私はどこをどう帰ったかも分りませんが自宅で目覚めました。

昨夜のことを思い出そうとすると、頭が割れるように痛い。

私はシャワーを浴び、身支度をしましたが、
一晩飲んだアルコールは残ったままでした。


私はフラフラと会社に向かいました。

私の心の中は空虚でした。


何も考える気力もありませんでした。



事務所に入ると、果たしてレイは既に席に着いていました。


じっと下を向いているレイ。

私は一瞬どうしていいのか、分りませんでした。

(なんて声を掛けよう、、、)
と、息を飲んでぼんやり立ち竦んでしまいました。


レイは私に気付いて顔を上げました。
そこには硬い表情のレイの顔がありました。

「おはよ、、、樋口さん、昨日は、おつかれさん、」
私はなんとか笑顔を作って声をだしました。

「おはようございます、昨夜は、有り難うございました、」
言葉を切るように話すレイ。


何か言わなくっちゃ、レイに昨夜のことを詫びなくっちゃ、、、


私はそう思うのですが言葉がでてきません。

そして、、、会話はそれだけで途切れてしまいました。



部長が出社してきたので、
「部長、昨夜は樋口君とすし秀で食事させていただきました。
 有り難うございました。」
と私は昨夜の礼を言いました。

部長は、
「工藤君、随分酒臭いじゃないか、ドレくらい飲んだんだ?、」
と聞きました。

私は、
「それが、あまり覚えていないんです、、、すみません、」
と答えました。
(昨夜のことは殆ど覚えていないのです、
 ドレくらい飲んで、どこでどうやって帰ったさえも、)
私は小声で言いました。

部長は呆れた顔をして、レイに声をかけました。
「樋口君、大丈夫か?、ちゃんと帰れたか?、
 工藤君は全然覚えていないそうだ、もう、困った奴だ、な、」

レイはまじまじと私の顔を見てから、笑顔を作って、
「大丈夫です、部長、私、ちゃんと電車で帰りました、
 昨夜はごちそうになりました、有り難うございました。」
と答えてくれました。

部長は私の顔を見てニヤっとし、
「そうか、しっかりしろよ、工藤君、」
と私の肩をたたき行ってしまいました。



レイが私に聞きました。

「工藤さん、ホントに覚えていないんですか、、、?」

私は、「うん、ゴメン、」とウソをつきました。

「オレ、酒を飲むと記憶が飛んじゃうんだよ、ゴメン、、、」


レイは拍子抜けしたような顔をして、
少し軽蔑的な目を私にむけながら呟くように言いました。

「そうなんだ、、、」


「、、、うん、そうなんだ、よ。だからオレと飲む時は、注意、だよ。」

私は居直ったような言い方をし、その話を打ち切ってしまいました。



私は卑怯なウソをつきました、、、

もう、私には昨夜のレイに対する行為を、
酒の上での間違いとするよりなかったのです。

そうすることによって、私の人格がレイに軽蔑されようとも、
その時の私には他に選択肢がないように思われたのです。

私はすでに婚約者がいて、そして子どもも生まれてくるのです。

如何に私がレイに好意を持ったとしても、
それは実ることのない恋愛感情の芽なのです。

私は私の心の奥深いところにこの恋愛感情を封印して、
もう二度と芽が出てこないように固く閉ざすことを選択したのです。




、、、それから3年後、

この固く閉ざした恋愛の芽が封印を解かれ、

私とレイが恋愛によって結ばれようとは、

この時点では思いもよらなかったことでした。




(6.初めてふたりで飲んだ夜、の項 終わり)



《第一章 新入社員 終わり》



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この日記は全てはフィクションであり、
実在する人物をモデルにして書くものではありません。

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<作者・Jean-JacquesからのMESSAGE>

私の稚拙な文章をお読み下さいましていつも有り難うございます。
この日記は私の長年温めてきた恋愛の物語を纏めたいがために、
思うに任せて書き綴っているものであります。

第一章が終わりましたこの機会に、私のこの恋愛の話について、
自分なりに整理をしておきたく思いますので、
明日の日記は忘備録のようなものを書いておきたいと考えております。

予めご了承下さい。

今後とも宜しくお願い致します。

                  03/01/10  Jean-Jacques
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