J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2002年12月27日(金)    レイは、キョトンとした顔をして、

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (3)


私から見るとまだ幼いと感じたレイですが、
事務所の制服姿と違い、営業用にスーツに着替えた彼女は、
年の割にはしっかりとして見えました。


こうしてみると意外に美人だな、

私はそう思ったものです、最初に彼女を連れて歩いた日に。


レイ、
うっすらと薄い化粧をして、
日本人形のような切れ長の目、
すっとした形のいい鼻に小さな唇、
肩までのびた艶やかな黒い髪、、、

身長160cmを越えるスラリとした彼女、

ま、
客先の評判は上々、でした。

若いということで全てを任せることはできませんけれど。



その夜は帰社時間が遅くなったこともあって、
事務所に戻るともう残っていた人も僅かでした。

もう8時も近かった。

私は部長にその日の出来事を報告し、
在庫を管理する鏑木さんと打ち合わせをして、
レイに出荷の段取りを指示しました。


部長が言いました。

「工藤君、樋口さんはもう帰してやったらどうだい?
 こんな時間だ、明日にもできるだろう?、」

私は少しムッとして言いました。

「いや、こればっかりは部長、私の方針でやらせて下さい。
 一人でなんでもできるようになる、それが私のセオリーです。
 営業は時間なんて関係ありません、
 それに、、、樋口さんはそれを承知して入社したんです。
 彼女を年が若いからとか、女性だからといって、差別することは、
 彼女に失礼になります。」

部長は、やれやれという顔をして、

「ともかく、就業時間外だ、彼女の都合を聞いてやれ、な、
 今夜デートかもしれないんだぞ、」

と言い、ニヤリとしました。


私はレイの顔をチラリ見ました、
レイは小さく手を振りました、
(チガウ、チガウ)、そんな素振りです。


私はそんなレイを見て、ホッと緩やかな気分を取り戻し、
部長に柔らかい表情を向け言いました。

「了解しました、部長。
 生意気なことを言って申し訳ありませんでした。
 今日は後片付けだけをして、もう帰してやります。」

部長は私に向かって、

「ん、そうか、それでいい、どうも君は仕事となると真っ直ぐ過ぎる、
 それくらいの柔らかさでいかないとこの先潰れるぞ、」

と言い、続けてレイに向かって、

「たまには先輩にメシでも奢ってもらうんだな、
 工藤君は安全パイだ、妙な心配はいらん、結婚前だしね、」

などと言ってから、私とレイの両方を見比べて、わっはっはと笑いました。


私はすかさず、

「部長、部長も一緒にお願いしますよ、
 誘い水だけして、ほれ行って来い、はないですよね、」

と言いましたが、
部長は私の言葉を遮るように、

「いや、工藤君、今夜は僕も予定があってね、
 そのかわり、すし秀にいって食べてきていいぞ、
 決裁は僕があしたしてやるから、な、」

と言って、自席に戻るや「お先、」と帰ってしまいました。



すし秀、
そこは営業でよく接待で使う会社の近所のすし屋です。


私はレイに向かって、
どうする?、って、顔で聞きました。

レイは、
キョトンとした顔をして、
私の顔の意味が分からない、というふうでした。



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