J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2002年12月07日(土)    純一さん、みんなが、、、

J (1.新入社員)

3.雨、そして (7)


雨は上がりましたが海はまだ荒れていました。
打ち返す波は濁って泡となり、足元を漱いでいきます。

私はタバコをくわえ、黙って遠い水平線を見ていました。
友美さんも黙って私に付き合ってくれました。

少しして友美さんが聞きました。
「純一さん、明日は晴れるかしら?」
「ん?、大丈夫だろ、たぶん、もう雲が切れてきている、」


私には水平線の向こうに青い空が見えていました。
その光景は私を魅了していたのです。


  波のうねりの先の、雲のよどみの先の、
  海の先の切れるところ、雲の先の切れるところ、

  その境に、
  明日見えるであろう青い空が微かに覗く、

  もうすぐに闇に消え行く今日にあって、
  誰にも知られることのない今日から明日へのこの移ろい、

  壮大な自然の摂理を目の当たりにして、
  私は心奪われし時を過ごすのだ。


私は友美さんの肩を抱き、
「よかったね、こういう時間がとれて、」
と優しく語りかけました。


友美さんはうれしそうな表情をし、私に身体を預けましたが、
思い出したかのように、皆のほうに目をチラッと向けて、
「純一さん、みんなが、、、」
(みんなが見ているわ、)と小声で言って少し身を引きました。

「うん、」
(でも、この二日間、キスもしていないよ、寂しくない?、)
私は肩から手を引きやはり小声で言いました。

「うん、」
(今は大丈夫、夜に、今夜こそ夜のお散歩に連れていってね、)
と友美さんはさらに小さな声で囁きました。

「うん、」
(じゃ、夜に、)
私は言葉を発音せずに目で答えました。



さて、と、戻ろうか、
そう思ってあたりを見回した私の目に、ふとレイの姿が映りました。

(あれ?、)
レイは何やっているんだろう、あんなところで一人で。



レイは皆からひとりぽつんと離れ、海辺に佇んでいました。



  < Pre  Index  New >    


INDEX+ +BBS+ +HOME+ 
この物語はフィクションです。

My追加

+他の作品へのリンク+・『方法的懐疑』(雑文) ・『青空へ続く道』(創作詩的文章)