J (1.新入社員)
2.夏季研修 (6)
宿舎から海までは歩いて5分位でした。 みな水着姿で海に向かう坂を降りていきます。
先頭にA部長とB課長、 その後ろに新入社員の男女がばらばらと続き、 その後にA部長とB課長のご家族が歩き、 一番後ろに私と友美さんが並んで歩きました。
友美さんは小さな子供に纏わり付かれながら、 微笑んで言いました。
「ね、純一さん、子供ってかわいい、私、子供が大好きなの、」
「オレも好きだよ、結婚したらすぐに子供ができるといいね、」
と、まぁ、ありふれた会話をしていたようです。
レイはと言えば、 同期入社の仲良しの女の子と並んで歩いており、 まわりに男の子が数人、ふざけあいながら談笑していました。
(彼氏がいるってことは、あの中のオトコじゃないな、 高校時代の同級生かなにかだろうか?)
私は遠目でレイを見ながらそんなことを考えていました。
「純一さん、何見てるの?、レイちゃん?、」
友美さんは私の心のなかを覗き込むように、 そう言って上目遣いに私を見上げました。 私が黙っていると話を続け、
「う~ん、レイちゃんって、胸大きいもんねぇ、 身長も高いし、スタイルもいいし、もてるでしょうねぇ、 ね、純一さんは胸が大きい人、好きなんだもんね!」
と言うので、私は慌てて言いました。
「いやぁ、なに、発育が良すぎるのも色気がないもんだよ、 やっぱ、中肉中背、トモミさんみたいのが丁度いいんだよ、」
友美さんは顔を赤らめ、話題を変えました。
「レイちゃん、お付き合い始めたばかりなんだって」
「え?、どんな人?、」
「知らないわ、それしか聞いてないんだもん、 知りたいのなら聞いてあげましょうか、ナイショで、ネ。」
「いや、いいよ、興味ないから、」
私はちょっぴり知りたい気持ちになりましたが、 だからと言って知ってどうなるわけでもないのですし、 また友美さんに妙な疑いをもたれても心外なので、 きっぱりと「聞かなくていい、」と言っておきました。
やがて海岸に出て、海は荒れていました。
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