J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2002年11月19日(火)    こうして私は、私と、私の婚約者と、レイを連れて、

J (1.新入社員)

2.夏季研修 (2)


「工藤君、毎年7月の終わりに、新入社員対象の夏季研修があるのは知っているね。」
「はい、勿論です、私も新入生の時に参加しましたから、」

(また部長はヤブカラ棒に何を言うんだろう?、この忙しい時に。)

と私は一瞬思いましたが、そうか、レイのことだな、とすぐに察しました。

「あ、樋口さんですね、大丈夫です、仕事の都合はいつでもつきますから。」
「うんうん、そうそう、樋口君、も当然そう、」
「樋口君、も、ですって?どういう意味でしょう、その、も、って言うのは?、」
「いや、君も引率として参加してもらうよう、総務から依頼があってね、、、」


夏季研修には、部長クラス、課長クラス、
そして私のような係長クラスの人間が、
それぞれ引率として参加することになっていました。

男女別に大部屋で宿泊するため、
引率者は既婚者が原則で家族同伴で参加します。

研修とは名ばかりで、海に行って2泊3日、
寝食を共にしながら遊ぶだけなのですが。


「しかし、私はまだ結婚はしていません、予定はありますが、」

私は疑問を持ち質問をしました。
部長はニヤリとして、ちょっと私の顔を覗き込むようにいいました。

「総務部の配慮だよ、君。君の婚約者は総務部の出身だろう。
 何でも君は忙しい、ろくにデートもしていないんだろう。
 いくらかでも一緒の時間を作ってやろうという優しい配慮さ。
 もっとも君への配慮というより、婚約者の○○さんへの配慮のようだがね。」

私は顔を赤らめました。
部長はどうだと言う顔で話を続けました。

「たまには息抜きして恋人と楽しんでこい。
 もっとも、夜は別々の部屋になるのでかえって寂しいかも知れんがな。」
「そんな私的な理由でいいんでしょうか?」
「いいんだよ、君は我が社のホープだ、
 その君への会社からの結婚前祝とでも思ってくれたらいい。
 それに、樋口君もいる、
 君のセクションから参加するんだから大義名分にもなる。
 どうだ、行ってくれるね。」

「はい、ありがとうございます。」



こうして私は、私と、私の婚約者と、レイを連れて、
夏季研修に参加することになったのです。



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