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2007年06月24日(日) アンリ・カルティエ=ブレッソン展

朝は晴れていたのに、昼過ぎから雨。500円の傘をさして、アンリ・カルティエ=ブレッソン展を見に行く。写真を見るのは久方ぶりだ。

竹橋駅を降りて、美術館へ向かう人の多さに驚いた。会場の列は、閉館前になっても途切れない。皆、じっくり目を凝らして見ている。若い人も多い。前を歩くキャップをかぶったお兄さんは、プロのカメラマンだろうと想像した。「この人、こういう構図が多いんだよね」と彼女に説明をしている。

私が目をひかれたのは、HCB自らがプリントしたという「ヴィンテージプリント」シリーズ―その陰の黒の深さと、河岸で食事をとる家族の後ろ姿。まるまると太った奥さんのふくよかな肉、ワイン、広げられた新聞紙。休日の午後の空気が、伝わってきた。

写真の中で時間が、止まっている。「決定的瞬間」(彼がアメリカで発表したファースト写真集の名前)とはよく言ったものだ。戦争や革命のただ中でさえ、その風景は一瞬という塊に変化して紙に焼き付けられていた。ドキュメンタリー写真とは、荒々しく動きがあるものだと偏見を持っていた私には、新鮮だった。

白と黒をずっと見ていたから、今日の気分には雨が似合うなと思いながら帰る。中野駅で地下鉄が地上に上がる瞬間、数日前に中央線から見た光を思い出す。雲間から差し込む金色の夕焼け空。読みかけの本から目を上げて、しばらく視線を戻せなかった。今日の空に金色はない。灰色のまま、徐々に暗さを増していく。最後は黒。うだるような夏も待ち遠しいが、ぐっしょりした梅雨も嫌いではない。


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