2007年06月02日(土) |
私たちは単なる奴隷だ |
高校時代の友人と飲むことになり、湘南新宿ラインで大宮へ。途中、電車の窓から見た荒川が、美しかった。夕焼けが出る前のうすぐらい光の中に、青黒い光をたたえて、川は郊外の家々の間を流れていた。水は、止まって見えた。
大まかにいえば、私はこの川のようなものを見たくて、日々を生きているのだ。電車が陸橋を渡る数秒の間に、そう思った。
帰りは、実家に泊まることにする。母はお盆に「ひよこ」と柳月の「防風林」と、急須と湯飲みをのせて、待っていてくれた。自分のことは、自分でしか決められないし責任も取れないけれど、必ず味方はいる。私の人生のうねりが帰っていくのは、結局青黒く静かな荒川の中なのだと思う。
そういえば、時間つぶしに駅の売店で買った本の中で、作家がこんなことを書いている。
闇を見て、また光が降り注いで、思い出を抱いて……うんざりするほどくりかえして喜びも苦しみもまたどこかへ消えていくサイクルの中で、立ち止まることも許されない人生の、私たちは単なる奴隷だ。 なのにどうして、こんなにもいいものだと思えるのだろう。 (よしもとばなな『なんくるない』)
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