この日記のRSSは下記のURLになります。
http://www.enpitu.ne.jp/tool/rdf.cgi?id=6723

2002年12月24日(火) 「宇宙は見えるところまでしかない」(松尾スズキ)

NHKのテレビで、のど自慢の舞台裏を映した特番をやっていた。
こういうの好きだ。
「安いのう」と言ってながしていた番組が、
ひとりひとりにスポットを当てることで輝きだす。

(ちなみにうちは毎週日曜日にのど自慢がかかっている家庭です。
親の音楽趣味の悪さって、カルチャー人間になれるかに影響するよねえ)

漫才師を目指す兄弟、プロポーズをする男の子、
おなかの赤ちゃんに向けて歌う母親。

人間の人生とは外から見るとまるでドラマのようだな、と感じた。

自分がやっているとドラマの全くない消費する日常だらけなのに。

地下鉄に乗る時間、「うんいいよー」とメールを送る時間、
トイレに入る時間、バイトで伝票書いてる時間。
そればっかりで埋まっているのに。
そこを省いては成立しないのに。

一年前、9.11のテロがあったときに、
色々な雑誌や書籍、新聞に「愛」という言葉が並んだ。
私はその意味が全く分からなかった。(今でも分かっていないけど。)

私の日常と、「愛」の間に大きな隔たりがあるような気がしたから。

当時の私は、
朝四時に起きて地下鉄に乗り、
アルバイトに行ってコーヒーを出し、(たまにこぼし)
ハムを挟んでサンドイッチを作り、(たまに包丁で手を切り)
レシートの紙が切れたときにいかに早く交換するかに命をかけていた。

それが私の、宇宙のすべてだった。
「愛」っていうのはきっと、ジョンレノンが言って似合う言葉なのだろうと思った。


のど自慢のとき妊娠五ヶ月だった女性は、
最近、双子を出産したという。
普通の家庭の、小さな寝室が映し出される。
彼女が「あーよかったな、あなたがいてー」
と眠っている2人に向けて歌ったとき
「愛」が見える、と私は感じた。

匿名のひとりひとりにしっかりと日常があるのだ。
そこにはたまに、気持ちいいこともあるんだろう。
涙が出るほど嬉しいことも、何度かあるんだろう。

だから私のことを誰も見ていなくても、
誰も認めなくても
怖がることはないのかもしれない。


 < 過去  INDEX  未来 >


バナナカレーログ [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加