2002年12月11日(水) |
綺麗にまとめた嘘ばかり。 |
家まで車を運転するあいだ、泣き出すのをこらえるのが精一杯だった。 時間はやってきて、時間は去り、それを取り戻すことはできない。 私は自分にそう思う。 私が手にしているのは、今この目の前にあるものだけなのだ、と 私は思いを定める。 でも降りしきる雪の中に車を進めていると、 私が手にしているものなんてほとんど何もないみたいに思えてくる。 私が老女とのあいだに今しがた交わした優しさのほかには何も。
村上春樹訳「バースデー・ストーリーズ」 ラッセルバンクス「ムーア人」
本屋をうろうろしながら 最近小説を読んでいないなあ、と思って村上春樹訳の短編集を買った。 喪失感の表現が、春樹自身の作品のよう。 最近結構まいっていたけど、これのおかげで ずいぶん回復した。
文章が、人の一生を大きく左右する。 それはとてもすばらしいことだと思う。 そして、そういう才能のある人を本当に尊敬する。 「話すこと」「書くこと」「音を鳴らすこと」「映像を撮ること」 「触ること」「聞きつづけること」・・・ コミュニケーションの方法はこんなに沢山あるのに、 うまくいかないことのほうが多いのはどうしてなのか。
どれかひとつくらい、伝わったっていいものではないか。
■「お金もあって、人脈もあって、環境も整いました。 そうなったら一番何がしたいの?」
聞かれてすぐに分からなかった。 かといって「ずーっと眠りたいです」とか答えたら 気がふれていると思われるだろうなあと思い、 「新雑誌が作りたいです」と適当なことを答えた。
正直、ずっと眠っていたいと思うほど、私は絶望していない。 たとえばトム・ヨークなどに比べれば、けっこうのうてんきなほうだと思う。
それじゃあ一番何がしたいんだろうか。 私が一番したいことは、多分お金では手に入らないのだと思った。
うわー!!気持ち悪い!!! なんだかとってもいいこちゃんな、 「千と千尋」のような世界に入ってしまったのでこの話題は ここで終わります。 迷宮入り。だめ?
■雪が降った。 松本大洋「GOGOモンスター」の主人公が、男の子なんだけど ”雪”という名前で、 私はそれがとても気に入っている。
子供が生まれたらつけたいなあと思っているくらい。 ただねえ、すくすく育つのかはおおいに疑問が残るので、ひとり審議中。 だって、「あっちの世界」が見えるのよ? 私はそんな子供じゃなかった。
小学校時代、想像のなかに世界が組み立てられてしまうほど、 現実はいきづらくなかったなあ。
というか、雪のいう世界が「想像の世界だ」と理屈をこねている時点で そんなものは見えるはずもないんだろう。
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