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2002年11月26日(火) for what

お茶汲みとはいえ出版社でアルバイトをしていると、
「本はこうしてできるのかあ」
とわきで見るうちに自然に覚えるのでなかなか役にたつ。
月並みな話だが、
みなさんの御協力がなければできないものだということが
身にしみて分かったのは収穫だった。

雑誌について一人、印刷会社の担当の人が来る。
私は密かに、このMさんが大好きだ。
どんなに忙しくて、難しい注文をされても
いらいらしたり怒ったりしない。
別にやりてだとかそういうのじゃなくて、
「えーまいりましたねえ」と良いながら原稿を預かっていく
普通ーのおじさんオーラが、妙に落ち着くの。

いつも、
「ごめん、もう少し伸ばしてください!」
「あと一時間で上がるから」とこきつかわれまくりながら
あらゆるわがままを聞いてくれる。

彼(とその後ろでデータを処理してくれる人)
がいてくれなかったら、絶対に本はできない。
ミスしたら、本が乱丁だっていう騒ぎになる。

「Mさんはどうしてあんな仕事選んじゃったんだろうねえ。
私なら耐えられないよー。」
「だって印刷所とうちとの板挟みだよ、
絶対向こうでちゃんとしきれ!って怒鳴られてるよ。」
それなのに、自分の意志はないんだよ。」
今日編集部で誰かが言った。
そんな元も子もない話しても、、と誰かが笑って、終わった。

Mさんは自分の印刷した本を見て、
「これは自分の作った本だ」と思えるのかなあ。
思えなかったとして、それじゃあどうやって
怒鳴られることとのバランスをとっていくのかな。
世の中にはそういう仕事をしている人が、沢山いるような気がする。

私はオープニングスタッフとして働いていたコーヒー屋を、
最後まで自分の店だとは思えなかった。

原稿をとりに来て、
印刷所まで運んで、
色をもっと明るく、とか延々言われて、
それでまた新しい原稿をとりに来て、
締め切りギリギリまで走り回るMさんが素晴らしいと、私は思う。

毎日繊維新聞をチェックし、丸ビルのオープンに一番に駆け付け、
「地味な仕事ですよー」といいながら
クレジットに名前が載る編集者よりも、
素晴らしいと思うのだ。

だからこそ、私はMさんたちに向けた本を作っていきたいなあと心底思うのだ。


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