英国人の彼女 6年間の遠距離恋愛の末、イギリスに嫁いできました。ロンドンで息子と3人で暮らしています。
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久々に何の予定もない週末は、のんべんだらりと過ごしていました。唯一のイベントが、トースター購入だし。安いの買ったらイマイチだし。トースターはやっぱり、日本のオーブントースター型が一番便利だと思うのですけれど、海外ではあんまり売ってませんね。ピザトーストとかグラタンとかも焼けるし、パン差し込み型より断然使い勝手がいいのになー。
恐怖症もちの人ってけっこういると思うんです。「恋愛小説家」に出てくる、ジャック・ニコルソン扮する小説家みたいに神経質じゃなくても、高いところちょっとダメ、とか、閉めきった小さい部屋は気分が悪くなる、とか、エレベーター苦手、とかね。それが、精神病学的には、高所恐怖症になったり、閉所恐怖症になったり、先端恐怖症になったりするのでしょうけれど。
わたしも、どうしてもダメなものがあります。理由なんて何もなくて、とにかくダメ。近くに寄れない。もしも触ってしまったら、と思うと、それだけで気が遠くなる。こっちに飛んだ来たら悲鳴を上げるどころか、体が硬直して何もできなくなってしまうし、それが家の中にいると思うだけで、どうにも不安でいてもたってもいられなくなる。
それが、「大きな羽のある虫」です。
蝶とか蛾とかゴキブリとかバッタとかトンボとかカブトムシとかとりあえずなんでも。
蚊とハエは大丈夫です。大きくないから。クモも大丈夫。飛ばないから。
ほんとに、理由はありません。別に蝶や蛾が危害を加えてくるとも思わないので、どうしてこんなに怖いのかわからない。でもどうしてもダメなんです。大量に見掛けると、怖くて涙が出てくるほど。小学5年生のときに学年で行ったキャンプ場のトイレに蛾が沢山いて、ひたすらトイレを我慢したくらい、筋金入りにダメです。
幸いなことに、それ以降そんなに虫が大量にいる場面にはほとんど出会ったことがなかったので、極限状態には陥らずに済んでいますが、家のドアに小さな蛾がへばりついているだけで、家に入れなくなります。
ところがこの国。巨大な羽アリがいるんです。羽アリなんて、そんな大きくなるわけないと思うでしょう?わたしも最初見たとき、アレが羽アリだとは夢にも思いませんでした。大きさは手のひらを大きく広げたくらい。でも体は蟻サイズです。つまり、羽部分がめちゃくちゃ大きい。羽が大きくなればなるほど恐怖心が増すわたしとしては、この世で一番怖い虫ランキングに蝶と蛾を抜いて堂々の一位獲得です。
そして、何が恐ろしいって、この虫、一匹単独行動ではなく、ある日いきなり大量発生するのです。それが、今年はこの土曜日でした。
外にご飯を食べに帰って、彼の大使館に向かっていた夜のこと・・・。
あ、今日は羽アリ発生の日だね、と脳天気な彼の声に、ふと窓の外を見ると・・・前から横から上から後ろから、羽アリ・羽アリ・羽アリ・羽アリ。
光に集まる性質があるようで、車のランプに突撃する羽アリがまざまざと近くに見えて、失神しそうになりました。もっと怖かったのは、家の前の蛍光灯に羽アリ玉が3メートル四方に渡ってできていたこと。ウソじゃないんです。本当です。巨大羽アリがウオンウオン光にたかっているんです。
車から出て家に向かう間、震えが止まらなくて、半分泣きながら駆け抜けました。幸いなことに家の電気をつけっぱなしにしていなかったので、家の中には一匹もいませんでしたが、電気をつけた瞬間から、どこから入ってきたのか細やかなピーンという音をさせて、床の上で羽ばたく羽アリ。この時点でかなり極限状態でした。
とにかく家の中にいる羽アリを全部彼に取ってもらって、ドアの隙間や窓の隙間に新聞を詰めて、電気を全部消して、安全地帯を確保しましたが、それでも窓の外は一面の羽アリ。しかも、珍しい!これは写真を撮らなければ!とうきうきカメラを抱えて外に出ていくダーリン(仮名)。カーテンの隙間からのぞいてみると、体にまとわりつく羽アリやフラッシュに反応して近づいてくる羽アリがいて、この人どうかしてる・・・と気分が悪くなりました。
暗がりで泣いているわたしをみて、ようやく異常に気づいたダーリン(仮名)。大丈夫、僕が守ってあげるよ、と抱きしめてくれたけれど、この夜は一睡もできませんでした。
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