家族進化論
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2004年06月30日(水) The Strawberry Season/Erslkin Caldwell

苺が熟れ始める初春には、誰もが苺摘みを手伝いにあちらこちらに駆けずっていたものだった。
苺がよく熟れ、収穫時期になったら一つの畑に35、40人ものいることもざら。
中には家族を引き連れ、苺を取り尽くしたらさっさと次の畑に向かう、そんな男もいた。
苺摘みの人々は小屋の中で寝たり、それがないならどこか場所を見つけ寝た。
そして苺の収穫時期はとても短いものだったから、皆朝から晩まで働かねばならなかった。

苺摘みは楽しいものだった。
畑にはいつも女の子が沢山いて、彼女達にいたずらするのは至上の楽しみだった。
苺摘みの時にいつのまにか列から離れて一人になってしゃがみ込み、スカートの下を少しでも見せた子がいたならば、
最初に見つけた奴が出来る限り大声で叫んだ。
残りの僕らは彼女に近付いてひやかして、畑の四方八方に逃げた。
他の少女は彼女を遠巻きにしてくすくす笑い、見せつけるようにスカートの裾を下に下げた。
ひやかされた少女は真っ赤になり、苺の籠を持ち貯蔵小屋に逃げ込んだ。
大体、その子は別の少女がうっかり一人でしゃがんでしまい皆がひやかしに入ったら畑に戻ってきた。
ファニー・フォーブスという、いつもしゃがんでスカートの中を見せる子がいた。皆彼女を大好きだった。

僕らの苺摘みの別の楽しみには「苺叩き」という遊びがあった。
籠を苺で一杯にする為に一心にしゃがみこんでいる女の子の後ろに誰か一人忍び寄り、服の中に大きく熟れた瑞々しい苺を落とすものだ。
大体苺は背中の後ろの真中辺りに止まってしまう。僕らはそれを思いっきり叩いた。
潰された苺はぐちゃぐちゃになった。
赤い汁が服の中を通り抜けて垂れ、大きく丸い染みを作った。苺が背中にひっかかるのはもっと最悪だった。
皆畑では古着を着ていたので染みを気にする必要はなく、そのため苺の染み自体を気にする女の子は殆どいなかった。
最悪、なのは「笑われる」事だったのである。
皆笑うと苺摘みを忘れて苺摘みの手が止まった。それが終わったら皆仕事に戻り、誰かが又苺叩きをやらかすまでその事は忘れていた。
皆苺摘みが大好きだった。
ファニー・フォーブスは他の誰よりも苺叩きの被害者だった。
男と男の子は皆彼女が好きで、彼女は全く怒らなかった。そんなファニーは可愛かった。


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