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2003年06月18日(水) 好きだから嫌い


 あれだけ言っておいたのに、貴方ったらわたしの前で無防備で寝てしまうから、わたしは我慢できずに、傍らで忠告も聞かず小さな寝息をたてて眠る貴方の身体を切ってみた。
 胸を切り開く。
 貴方の中を覗き込みながら手を入れると、規則正しい膨張と収縮をドクンドクンと繰り返す、暖かい心臓に指先が触れた。
 そっとまあるく貴方の心臓に手を当て、眠る貴方の瞼に口付けをする。
 ここで一握り力を込めたらどうなるのだろうと考え、それを打ち消すようにわたしの指がピクンと跳ねて我に返った。
 慌てて、手を引っ込めて大変なことをしそうになっているんだと気づく。それでも、名残に貴方の心臓にマジックでわたしの名前を書き、その上からたっぷりと蜂蜜を垂らした。ステップラーで縫合してから、わたしも隣に横たわった。
 「私の中に安易に居続ける、貴方は嫌い」
 貴方の髪を指で優しく梳くようにして、冷たい耳たぶを唇で暖めるように含みながらそう呟いた。

 たぶん少しだけは、眠ることができそうな御呪い。


香月七虹 |HomePage