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2003年05月31日(土) 出会い系サイト?


 PM3:00新宿PH
 まだ覚めきらない状態で煙草に火を点けつつ、テーブルに置いた走り書きのメモを見る。
 いつもよりも遅めに起きた朝。

 何か連絡はないかとメールチェックをして、時間をつぶすようにサイトを巡回する。そして意味もなくメッセンジャーを立ち上げて、同じように時間をつぶす人が居やしないかと登録者を探してみるが、誰もログインしていない。
 切に逢いたいと願った人ではないと、なんだか落ち着かない。
 珈琲を淹れてまたPCの前に向かう。
 時間を決められての作業は、何をするにもどことなく集中ができない。
 拘束されているような気持ちは、イライラ感に変わりそうである。
 薬を飲むために軽い朝食のつもりでヨーグルトの中に切り分けたフルーツを入れ、ニュースを観ながらお腹に入れる。
 タスクバーにメッセージ受信の表示を見つけ、彼女と話しをする。
 ヨーグルトを入れた容器に水滴が付きだした。食べきらないまま、ラップをかけて冷蔵庫に仕舞う。そのついでに薬を飲み、珈琲のおかわり注ぎ、またメッセージをくれた彼女とひとしきり話しをする。
 外は洗濯をするには十分すぎるほどに天気がいい。
 部屋中の空気を入れ替えるように窓を開ける。
 シャワーだけでなく、湯船にお湯をはり入浴剤を選んでゆったりと入る。
 浴室の窓も開け放すと、顔に当たる風が気持ちいい。
 シェイバーの充電を怠っていたので、取り付け鏡の裏にある棚から剃刀を取り出す。陽に翳した刃が光を反射してとても綺麗だ。指を滑らせないようにして触れてみると、何故かとても冷たいように感じた。
 軽く体を拭いただけでキッチンに向かい、昨晩から冷蔵庫に冷やしておいた珈琲を氷を入れたグラスに注いで、再び浴室に戻る。グラスを持ったまま浴槽に浸かり、また同じようにグラスを陽に翳して見た。氷を一欠けら浴槽に落とす、溶け往くさまが蜂蜜のように見えた。
 すっかり飲み干したグラスに残った氷を口に含んだまま、バスタオルで全身を拭き髪留めをして風の通る部屋に戻る。
 洗い立ての顔に化粧をする気にはどうしてもなれない。
 ところが人と会うとなるとそうも言っていられず、また少し億劫な気持ちになる。
 ファンデーションが呼吸を妨げて苦しくさせるように思えて、溜息混じりに鏡を見つめながらマスカラと口紅だけをつけることにした。
 乾ききらない髪もそのままで、胸を強調させるようなハリウッドブラを着けそれに沿うようにカットされたTシャツを着込んで気合を入れてみた。気合はそこまで。あとはGパンにミュールで現地に向かう。

 どれほど電車を利用していなかったのかが、ホームに取り付けてあった喫煙所が無くなったことで知る。
 無いとなると吸いたくなるもので、JRを利用した時にホームにある喫煙所で過ぎ行く電車を2本見送った。
 新宿に着くと、知人からの電話が入る。これから人と会うこと、こっちは天気がいいこと、そんなことを話しながら目的地まで向かう。向かう間にも、数人からの「おはようございます」を知人に聞かれながら。
 新宿プリンスホテルの前から着いたことを知らせるようと待ち合わせ相手の携帯に連絡した時に、相手は待ち合わせ場所でないところに居ると言う。この場所から歩いて数分のところで、時間をつぶしていたのだと言う。一人でホテルのカフェを利用するのは気が引けると言う。待ち合わせ場所指定の時に何故そう言わないのだろうと、この時期には珍しい暑さも手伝ってか、少しムッとする。
 連立するラブホテルの路地に立つお姉さんと同じような風情で、待ち合わせ人の来るのを待つ。
 「こんにちは、七虹さんですよね」歳の頃は30代半ばの艶々とした丸顔のサラリーマン。軽く会釈をして相手を見ようとした時すでに、相手は寄り添うように隣に並ぼうとする。わたしは、急ぐようにしてホテルのカフェに向かおうと歩き出したが、相手は普通の喫茶店がいいと言う。とくに場所に拘るわけでもないので、店を探して歩き出すとまた彼は隣に寄り添い、髪に触れようとしてくる。一瞥した後、慌しく先を急ぐかのように近くの喫茶店に向かった。
 目の前の飲み物が無くなっても気を使うわけでなく、他に行きたい場所を尋ねるだけで本人が行きたいわけでなく、共通する話題を探すわけでなく、いつしか店の客にとる態度と変わらなくなる自分になっていた。一つ違うのは、無給であること。
 8時までに原宿に戻れればいいと言われても、それまでの時間を一緒に過ごすにはあまりにも手持ち無沙汰なので、悪酔いした客を送り出すかのように店を出て、「次回はなにか美味しいものでも…」との声を後ろで聞きつつタクシーを拾い相手を見ずに軽く会釈をしただけで別れた。
 自宅付近になって、最寄り駅に自転車を停めて出かけたことに気づく。
 駅でタクシーを降りた。駐輪場で料金を払い、自転車を漕ぎ出すと後輪がパンクしてた。自転車を降りて街灯の下でよく見ると、なにか刃物で切られていたようだ。
 性質の悪い悪戯。ついてない。


 もうずっと昔のことだけれども、あの時に一度だけ逢った随分と年下の彼のほうがずっと男だった気がする。逢いたいと自分が思ったかの違いと言われればそれまでだが。

 香月七虹、何処かアジアの辺鄙に売られる訳で無いのなら、逢いたい(見たい)と言われれば二つ返事でお逢いいたします。



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