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2006年03月11日(土) 訴えられて思った事



 三月九日の産經新聞朝刊の何面目かの右半分全面広告は、「最高裁判所」のコマーシャルコピー

「ゆっくりつき合っていこうとおもいます・あなたが参加する裁判員制度、平成二十一年五月までには始まります」
だった。
 去年の秋頃、近所の爺様に訴えられた。懸案は庭の木の事(枝が爺様の離れの庭にかかっている)でたわいもない事だったが、なぜ、簡単にすぐ訴えるのか不思議に思った。この爺様(80歳くらい?)、近所中の人を相手に、訴えたり、ストーカーまがいの事をする常習犯で、近所の老婦人はノイローゼのようになって、家に相談に来た事もあったが、対岸の火事くらいにしか思っていなかった。それが、突然裁判所から呼び出しが来た。今も、調停中である。

 齢(よわい)80を越える歳になると、普通なら孫もいて、好々爺(こうこうや)然として、にこやかに趣味に生きるという印象があるが、この爺様に限ってなぜなんだろうと疑問が湧いたので調べたら、すぐに分かった。若い頃、どうも法科で学んだようだった。それで法律知識を武器に、すぐにあちこち訴える行為に走るのだと合点した。
 新聞のテレビ欄を見ると、何年か前から行列のできる法律相談など、そう言う類いの番組が載っている。民放は見ないので知らないがゴールデンタイムにあるくらいだから人気なのだろう。これらを参考にして、これからこの爺様もどきがどんどん増える。

 アメリカが毎年日本に命令に近い文書『年次改革要望書』を出して来ているのを知っているだろうか。国会議員ならほとんどが知っているというが、なぜか新聞などではあまり読んだ事が無い。ほぼ、日本国政府は言われるまんまに要望どおりにしている。属国と言われる所以である。

 その中でアメリカは、日本の司法制度の改革をして、「遅い裁判を早くしろ」、遅いのは「裁判官や弁護士の人数が少なすぎる」からで、増やせ。「弁護士業務の自由化をしろ」、「陪審員制(日本では裁判員)にしろ」と言っている。日本は言われるまま、2004年4月、アメリカ型の法律家を数多く育てるため、法科大学院を作った。今年から新司法試験が開始され、2010年頃には今の3倍に近い年間3000人の法曹が誕生することになるとホームページにある。

 法律には、ヨーロッパ型とイギリス(アメリカ)型があって、簡単に言うとヨーロッパ型は、ローマ帝国時代の法大全とナポレオン法典の流れなどをくんで、法学者など専門家が体系付けて編纂した、これを「制定法(シヴィル・ロー)」と呼んでいる。
他方、イギリス(アメリカ)型は、過去の裁判の判決例の集積を法とし、「判例法」とか「コモン・ロー」と呼ばれている。当然アメリカはこの、「判例法」をとっているから、裁判にあたって、過去の判例を調べるのに膨大な人員がいる。アメリカの弁護士が異常に多いのはこの辺の事情によるものだ。一つの事務所に何百人も抱えていたりする。
日本は,六法全書を紐解く型の「制定法(シヴィル・ロー)」だったが、上の法科大学院は、「判例法」とか「コモン・ロー」と呼ばれるアメリカ型で、これが毎年何千人と排出されるようになる。過去の判例を調べるだけなら、六法全書を紐解く型 の専門家はいらなくなる。

 個人は、マグドナルドのコーヒーをこぼして火傷したのは、マクドナルドが悪いと気軽に訴え得るようになる。企業相手に何十億もの金を踏んだくる事ができる可能性が出て来た。個人が株をする大半は欲からである。同じ楽して儲けるならこっちがいいぞ。
アメリカは最終的に、日本を訴訟型社会にして有り余る弁護士どもを日本に向けて来る。偏に自国の利益のために。やがて、子供が親を、親が子供を訴える、兄弟が兄弟を訴える、ご近所がご近所を訴える。目出たく日本の美徳「お互い様」は消えてなくなり、がさつなアメリカ型拝金主義の国と成り果てる。
2010年からそれは始まる。



参考文献: 拒否出来ない日本 関岡英之 文芸春秋


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