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2006年01月16日(月) |
仰天2題(下 -終- )仙人現る ! |
(後ろの木立の下は深い谷)
聞けば、仙人はドイツで数年勤めた後、今はエクス(エクサンプロヴァンス 、ここからだと車で時速100kmで走ったとして、二時間はかかる)に居る。そこから、山をたどり歩いて来た!!のだと言う。神戸に家族を持つ人であった。日本に帰る前の最後に一帯を歩いて回っている、帰ったら、この辺の石積みの家や塀などを家の参考にしたいと言った。 今日はここ、オペデット(Oppedette)に宿を見つけて泊まる予定で、その前に、ここからの眺めが良いので崖をよじのぼって一人眺めていたのだそうだ。 異国の山のど真ん中で出会ったことの奇遇を思いながら、それではお元気でと、別れを告げた後、崖をよじ登り、いい光の状態になるまでカメラを備え待った。
しばらくすると、ここから見て村右端の断崖絶壁を見下ろす野原に、黒い点が現れた。両手を大きく振っている。さっきの仙人であった。こちらも大きく手を振って答えた。いいなぁ、気ままな旅ここに極まれり。結局、この日は、良い光線に恵まれず、数時間後日の翳りとともに撤退した。
それから数日後、多くある村の一つ、サン・サトルナンレザプト()の評判のオーベルジュ(宿付レストラン)のレストラン、サンチュベールに昼飯を食べに出かけた。 午後の心地よい日差しの差し込む、リュベロン山が見渡せる眺めの良い窓際の席に案内された。季節はずれのこともあって、窓際の席には隣に英国人の夫婦一組だけであった。そこで、上機嫌で飯を食っていると、伴侶の箸が止まって、 バーをはさんだ表の小さなロビーの方を見ている。ロビーは通りからの光で逆光になって人は影にしか見えない。どうしたと聞くと、今外から入って来た人のシルエットが、数日前オペデットで会った仙人に似ている、いや絶対にそうだと言うので、ロビーに見に行ったらなんと、仙人であった。 「何でここに!!」また言った。 村は沢山あって、オペデットと直接つながっている村ではない。また別の山系にある。仙人曰く、オペデットを後にして、歩きながら山々に点在する村を眺めていると、向こうの山に、惹かれる村があった、のがここで、予定を変えて来たという。まったく、その奇遇にあらためて驚いた。
仙人は、チェックインした後、ワイングラスとワインの入ったカラフを手に、ギャルソンにわけを言って、横のテーブルに来た。仙人の話では、オペデットは、断崖絶壁にあるので、水は、村前にある役場からペットボトルを配給してもらうのだそうである。夜はゴーストタウンのようになって、怖かったと言った。 しばし、他国の村のレストランで日本語で楽しく談笑し、別れた。一期一会ではなくて、一期に二度の会であった。不思議極まれり、びっくりの連続だった。
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