目次過去未来


2003年04月12日(土) ミルクかスープか?煙草である!



 少し前、犬ワン(ケンワン、仮名)が主催するミルク(仮名)とソップ(仮名)の試合を見た。試合はあっけなく眼底骨折だかで、ミルク(仮名)の勝ちとなった。
 ミルク(仮名)は、たん譚がよく行く京都の日本料理屋に、犬ワン(仮名)の今は塀の中の社長と来たことがあって、そこで、ミルク(仮名)は極上の程良く焼かれた肉をもっと良く焼けと、一キロの肉を八百グラムに、脂が抜けてカスカスになるまで焼かせ、ばくばく食って帰って行ったという。化け物ですな。そんなに肉くいたきゃ焼肉屋に行きなさい。

それはさておき、二人は強いと思うが、もっと体が小さくて、強い奴?がいる。
煙草である。
別に喫煙して、それで肺ガンになってという陳腐をいうつもりはありません。たばこ一本が何グラムあるのか知らないけれど、この一本の煙草がミルク(仮名)もソップ(仮名)も一瞬にして倒すどころか、殺してしまえる。

 もう何年前になるか、NHKの番組で車がコンクリート塀に激突した時の、衝撃度実験をしていた。ダミーを乗せて、時速六十キロで壁と激突させる。
研究員が冗談で、ダミーの口に銜(くわ)へさせていたその煙草が、なんとフロントガラスに突き刺さっていたのだ。フロントガラスは傾斜がある、にもかかわらず!
格闘技での突きの力は、打撃に使う部位の質量(重さに非ず)×移動量?×スピードとなって理屈はつくらしいが、どうだろう。

 昔、空手を始めたきっかけとなった漫画の中に、中国人の李青龍と言う武人がでてきて、この人が湯飲み茶碗(鮨屋にある)を、最初、人指し指の先でコツコツとたたき、やがて気合いと共に指で湯飲みを突き通してしまう。
こんな場面になると、普通関西ではほぼ全員が「ンな!アホなァ」と声をあげて、漫画だと我に返るのである。
 ところが、先の番組を見てから、中に骨のない煙草がどういう具合か時速六十キロで飛んで、堅いフロントガラスに穴を開ける、ならば骨のある指が磁器(ガラス質)と違って陶器(土質)ならそう言う事も可能かも知れないと思い始めた。
 この頃から、只単に大きくて重い重量級だけが最強とは単純に思えなくなった。日本には九十何歳の老人(腕相撲協会の会長)が現役のプロレスラーと腕相撲して互角だった(最期は負けてしまったが)り、辰吉と名勝負した薬師寺を相手にした古武術の爺さんは、薬師寺が繰り出すパンチをひょいひょいよけてついに当てさせなかった。
これがきっかけで古武術の本を読むようになり、ここから上の話題とははずれるが、「足の運び(歩く)」と言う事に興味をもった。

 明治初期に日本に来ていた、建築家のブルーノタウトが、「日本人は歩くときに手をふらない」と驚いている。背筋を伸ばした姿勢で、踵(かかと)から着地して歩くというのは西洋の作法である、植民地先のアフリカの黒人が水瓶を頭に乗せて、歩くのを見て、国に帰って本を頭に載せてまねっこした。それを日本人が真似た。決して日本人本来の歩き方ではなかった。日本人は駱駝(らくだ)と同じ並足歩行だった。昔の絵巻などにも手足を交叉させて歩く人の姿はない。

 着物のご婦人はしずしず歩く。この時、足と反対の側の手を振り出すことは不自然である。
 江戸の頃に、今の徒競走のように走れたのは猟師・飛脚・忍者くらいだったという。百姓は一生走ることはなかった。だから百姓一揆において、わーっと走るの図はありえないのだそうだ。
 今の武道には、まだ片鱗が残っていて、順突き・逆突きの、順突きがそうで、踏み込んだ足の方の手で突くのが、順なのだ。相撲の稽古でもよく見ていると、出た足の方の手が一緒に出ている。
 
 我らは、知らぬ間に西洋化教育をされ、西洋の目でものを見、基準にしている自分を見て、愕然とするのである。余談だが、日本人として、西洋を見た最後の人と言われている夏目漱石は、洋服を着てどう歩いていたのかとても興味がある。

 蛇足:「武」の語源は「第一歩」の意味がある。「歩」も「武」も漢字中に「止」が入っているので親戚なのだ。「足」も同じ。

    参考文献:古武術の発見 養老孟司・甲野善紀
          古武術からの発想 甲野善紀
 










myrte21 |MAILHomePage