目次|過去|未来
三年前の初夏、スイスアルプスまっただ中の、グリンデルワルドにある、シュバイツアーホフというホテルにいた。夕飯をとるテラスからはアイガー北壁が目の前に見える。北壁の中腹辺に、ほぼ垂直の岩壁にへばりつくように小屋がある。 山小屋は見えないが、山小屋のともしびが広い斜面にぽつんと見えた。テラスには備え付けの望遠鏡があって、北壁の登攀者を確認できるようになっている。 夕飯の間はチターの生演奏。第三の男の演奏になった途端、拍手が起こった。四方は白銀の山嶺。至福の一時。やがて日は落ち、青い月が白きたおやかな峰々を照し、夜は更けていく。 翌日はユングフラウヨッホ(約3500m)に登った。といっても、登山電車を乗り継いで行けてしまうのだ。 頂上付近には、巨大な氷室があって、氷の彫刻などがブルーアイスのトンネルの中、あちこちに置かれている。日本の相撲取りの全身像もあった。そこで本題に入る。 この山の中を巡っている巨大な氷室(迷路のようになっている)は天然自然の環境で成り立っていると、本日の夕方のニュース番組を見るまで思っていた。近年、地球の温暖化かどうか、雪が溶けている事も知っていたつもりだった。 ニュースでは、このユングフラウヨッホの氷室の事を伝えていた。何と!あの氷室は巨大なクーラーで冷やして人が管理しているのだそうで、グリンデルワルドの雪も、どこかから持ってきている??と伝えていた。標高三千五百メートル近くの所にあるというのに。 知らなかった! 確かに、八十五年頃に訪れたときは、もっと氷河も下の方まであった。 本当に知らぬ間に深刻な事になってきているようだ。 あの巨大な氷室全体が人工的な冷蔵庫なのだ。
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