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2001年09月16日(日) 百円式と珈琲のイノダ



 百円式とは内田百聞先生のひゃっけんからとった。本来、正しい表音表記にすれば、関西では100円はひゃっけんと発音することがあるのでこう書いてもいいはずだ。歴史的背景のある書き方、蝶々(てふてふ)は、ちょうちょうと書かねばならんと国が決めてから、日本人の混乱が始まった。
だから、「例えば」は「例へば」が今でも正解、「向こうえ」ではなくて「向こうへ」が正解なのは誰もが知っている。

 百円式とは、1000円の金を工面しに行くのに3000円使っても頭が回りかねるすかたんをいいます。
イノダの珈琲屋に通ってはや、27年((;゚゚)ワーッ!)、通い方は百円式。どう言う事かというと、400円だかの珈琲を飲みに行くのに、往復2000円(タクシー代)を払って行くからで、かといって勿体ないとか損とか思いもよらない、百円式の所以ナツバラハウンドドックなんである。
 黙って座ればぴたりと珈琲の角砂糖の数、新聞はどれと前に出てくる。初めて来た客は目を白黒させてこれを見る。
 大きな円卓の中にいる従業員が、挨拶にそれぞれ来、答え、後、新聞に目を通す。客はその様子から「ははん!馴染みの客か」と悟る。昨日、2.3年前に引退してここを退いた、珈琲道40数年の猪田さんに偶然会った。
中におられるときは、終始気を配りながら、こちらが本を読みふけり知らぬ間に数時間経た時、普通なら嫌な客だと思うだろうが、猪田さんは、半分くらいの量の新しい珈琲を淹れてくれたりした。最初は恐縮してお金を払おうとしたが、請求書に書いてないものはレジは受け取らない。その内、いつしか甘えて終い、退職の日まで屡々その恩恵をうけた。

その猪田さんが来ていた。良く来るらしいのだけど、週一二回の内に、偶然出会う確率は少ない。聞けば、徳島の鳴門に珈琲の講演にこの十月行くという。もう四年目になるという。この鳴門の珈琲屋は高校時代の同級生がやっている。カナダ製の馬鹿でかいログハウスに、イノダを模してカウンターが作られている。なんでそこまで気に入ったかは知らない。高校時分に高田渡という人が歌って流行ったコーヒーブルースという曲の中に「イノダに行こう」というフレーズが出てくる。良く歌っていたようだから郷愁があったのだろう。

 その同級生とは現在つき合いはないが、わざわざ呼んで講演してもらっているのはなぜだろう。きっと有名人好みなんだろう。猪田さんはTVコマーシャルにも出たことがある。
 猪田さんがカウンターの中に立たなくなって久しいけれど、中にいる男ばかりの従業員は、他にない位の真っ直ぐな職業意識を持った若者達だ。かっこええのだ。この場合、かっこええは、姿形ではない。東京から来る常連、地場の常連そのほとんどの客の好みと読む新聞を把握している。立ち姿も気持ちいい。近頃良くいる、動物に近いくず店員とは同列に出来ない。
猪田さんを見て育ったと言える。音楽も流れていないので静かである。

 百年目の再開のごとく握手し、内心健康の無事を確認して喜び合った。何年か前から鳴門に行っている事は知らなかった。久しぶりに猪田さんにあったら、その同級生を○○さんと名前で呼んでいたから、もうかなり親しくなっているんだろう。店は繁盛しているそうで、それはそれで目出度い事ではある。小柄で足が悪いのだけど、握手した際、握力の強さにはびっくりした。まだ現役でいてほしいと心から思った。










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