■TRASH■

2003年01月14日(火) チョコボに乗った日

FFXIでは、絶対勝てない敵というものがいます。

確かに他のゲームでも、レベル1の勇者がドラゴンを倒したりは絶対出来ないでしょう。
しかしレベル1の勇者が歩く場所にはドラゴンが現れることはなく、
エニックスやスクエアが(って今は同じ会社か)暴動を興されることはありません。

橋を渡ったら敵が強くなる、
レベルが3上がったら、苦戦していた敵を楽に倒せる。

お約束というのは大切です。
細かい単位でのカタルシスは、先へ進む原動力になります。

もちろんFFXIでも、レベルさえ上げれば倒せるのがほとんどなんですが、
そのレベルを上げるためのフィールドに、現段階ではどうあがいても無理という敵が、普通に歩いていたりするのです。

しかしそこはキチンと回避方法が用意されています。
なかったらゲームになりません。
お客さまセンターは電話でパニックになります。

FFXIの敵との接触の仕方は、ドラクエや従来のFFのようなランダムエンカウト方式ではなく、
自分がフィールドを歩くように、平原をうろついているモンスターと自分のどちらかが、相手に攻撃意思を持つことにより行われます。

攻撃的な敵のこちらの認識のしかたはいろいろで(攻撃をしかけてこないものもいる)、視覚や聴覚・嗅覚に魔法や生命力を感知してこちらを判別し、
気づくやいなや、猛然と武器を抜いて走ってくるのです。
もちろん敵から襲ってくるようなやつほど、嫌な敵が多いというのもお約束です。
来るなー。寄るなー。

しかしこれまた上手く出来てるんですよ。

嗅覚で判別する敵なら、雨や川で巻くことが出来るし、
視覚なら岩陰や段差を上手く使い、夜目の敵なら昼間に動いたりまたその逆もしかり、
聴覚なら足音を消す呪文を使ったり、離れるまでじっとしてたり。

プレイヤーの気を付け方一つで、上手く戦闘を回避できるのです。
このため移動もかなりスリリングで、緊張を強いられるのが素敵な感じです。


さてさてそんな前提を踏まえた上で、本題です。

チョコボは20歳になってから。(メンバーの中の誰かの言葉)

FFXIの舞台であるヴァナ・ディールは広大です。
レベルが上がるごとに、経験値を稼ぐ狩場までどんどん遠くなり、街から20分も30分もリアル時間で歩かなければなりません。

平日無理やり作った1時間でやっている身分では、辿り着くだけで精一杯。
街でしか出来ないこともあるので、なかなか大変です。

しかししかし、この世界の馬に変わる交通手段であるあの黄色い飛べない鳥、チョコボは恐ろしく早く、そしてモンスターの追随を許しません
有体に言うと、無敵状態で高速移動が可能になります。
なんと素晴らしいのでしょう。
文明開化万歳。

しかしタダでは乗れません。
まず前提として、レベルが20以上であること。
それと、乗るための資格を受けるために、ジュノという街に行く必要があること。

ジュノという街に行く方法は三通り。
各主要都市から30分くらいかけて歩いて行きます。

しかしその途中には、たかだか20程度のレベルでは、2・3撃ほど殴られたら死んでしまうような、恐るべきモンスターが山ほどいるのです。
けれども行かねばなりません。
快適ライフのためだけではなく、チョコボに乗れるということは成人の一種の証でもあるのです。
どこぞの部族が成人の証に、バンジージャンプをして勇気を示すように。

必要なアイテムは前日メンバーで狩りをして揃えてあり、後は行くだけ。
朝日が昇るのを待って、広大なフィールドを走り抜ける。

一番の危険地帯に入る前に、日が昇るのを待つ間、所在がないわたしはアウトポストの中をぐるぐる回ってました。
突っ立てが立っていてそのため多少視界が妨げられるというだけの、それでも荒野の中では安全地帯となる、それがアウトポストです。

だって、ちっとも落ち着かないのです。
もともと落ち着きはないのですが、今日は更に落ち着きません。

1度でも死んだら、ペナルティの経験値ダウンによりレベルが19に戻ってしまうのです。
しかし、安全のために経験値を稼ぐ時間も今は惜しい。
仲間が次々とジュノに辿りついているのです。
レベル20以上のメンバーでは、わたしが一番最後。
これ以上遅れたくはありません。

日があけるまではもう少し。
夜目の効く敵が多いというので、少しでも安全に移動するための、涙ぐましい配慮です。

落ち着かないわたしのすぐ側に、やはり落ち着かないモンクが一人。
その人のレベルは21。
とてもこの周辺の敵を、一人で安全に倒せるとはいいがたいレベルです。
勝てる敵より、勝てない敵の方がはるかに多いのですから。

その人も、うろうろしたり座り込んだりで落ち着かない様子。
ふっと気づく。
この人もジュノ行きではないかしら。

「僕も、ジュノに行こうかどうか迷っているんです」

思いきって話かけると、その人はそうやって答えてくれました。
名前はDさん。

死ぬのは怖い。
でも、チョコボには乗りたい。

誰しもいつ行こうか迷うところです。
だってレベル30を超えていても、一度襲われたらたまったものではない空間を通過するんですから。

やたら饒舌となっているわたしが夢中で話をしていると、画面上に赤い文字が。
そして、急激に減っていく体力。

背後から、ゴブリンが弓を打ってきていたのです。
油断して、突っ立ての間に姿をさらしていたのでした。

魔法を詠唱しながら見る敵の強さは、「強そうだ」。
この世界の「強そうだ」は、「一人じゃ無理だね」の異口同音。

バインド、ファイア、ブリザド、ケアルを唱えたところで、救援要請。
Dさんに応援を願い、なんとか戦闘を終了させることが出来ました。

自分一人で戦闘をしている時に、初めて出した救援要請。
事前に話をしていなかったら、決して求めなかったでしょう。

他人と接するのが苦手なわたしが、旦那がいない時に自分から話しかけたのは、ここに来て初めてだった気もします。
しかもその人に助けてもらっただなんて。

お礼をいい、救ってもらった命を無駄にしないように心に誓うと、折りしも夜明の時刻。

偶然と必然が、ドラマを生む。
多分、こういうのがネットワークゲームの醍醐味なんかじゃないかと思います。
他人にとってはなんてことのない、しかし当人にとっての一大イベント。
人生のそれに似た、素敵な積み重ね。

そしてわたしは覚悟を決めると、ジュノへ向かうためアウトポストを出ました。
ありがとう、さよならと、その人に手を振りながら。
一番恐ろしい平野を抜けるために。


(すんません、誰も望んじゃいないでしょうが、明日以降に続きます)


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