オクラホマ・スティルウォーターから

2004年02月08日(日) 外国人研究者には厳しい?

 木曜の夜だったか、寝る前にネジャーティが「こんなのがあったよ」とインターネットから印刷してきた記事を見せてくれた。

 それは科学雑誌「ネイチャー」に載っていたもので、テロ以降のアメリカの外国人研究者に対する入国管理の厳しさを書いたものだった。私は社会科学の方なので、自然科学を対象としたネイチャーとは無縁なのだが、国際移民を専門としている私にとってはその記事は興味を引き一気に読んでしまった。といっても、化学を専門としているネジャーティにとってはとても深刻なもので、本当は他人事ではない。

 未だ謎が多い9・11のテロ事件は、世界中からアメリカに来ている、または来ようとしている外国人にも大きな影響を与えたことは間違いない。記事にもあったが、一つは国によってはアメリカの大使館や領事館からビザがなかなか下りないらしい。中国人とイラン人の経験談が乗っていたが、イラン人夫婦の場合はかわいそうだった。

 夫はマサチューセッツ工科大学で、妻はボストン大学でいずれも博士課程に入ることが決まっていた。夫はとても優秀な人らしく、1996年にノルウェイのオスロで行われた国際物理オリンピアドで金メダルを獲得したほどだという。イランにはアメリカ大使館がないので、2人はまずトルコのアンカラの大使館で2度ビザを申請したが却下され、次にアラブ首長国連邦のドバイにある大使館で申請したが、またもや却下された。いったんイランに戻ったあと、もう一度ドバイで申請したが、再び却下された。そして、その理由を尋ねた時に言われたのは「二度とアメリカのビザを申請するな!」ということだった→なんてひどいことを・・・・。

 その間、申請していたカナダの大学院からオファーが出ていたので、カナダの大使館でビザを申請し、その場でビザが下り、カナダの大学院に進学した。2人はカナダでの生活が気に入っているようだった。

 中国人の場合もイラン人の場合も、その国というだけでビザ申請が却下されているようで、それはオハイオのコロンバスにいたオカンが、トルコで切れたビザを申請しようとして、結果的にはビザが下りなかったのとよく似たケースのように思える。

 この記事にはグラフも載っていて、いかに多くの外国人研究者がいるかということがわかる。アメリカにいる、科学やエンジニアの分野で博士号を持つ外国人でトップは中国人の3万7900人、インド人が3万100人、イラン人は4800人、日本は12位で2800人となっている。

 アメリカの大学機関の科学の分野の研究室がいくら優秀な外国人学生が欲しくて入学許可を出しても、肝心のビザがもらえずアメリカに入国できないことは大きな痛手のようだ。また、アメリカで行われる学術学会の会議への参加に関しても、日本のようにビザなしで行ける分には問題ないが、どのような入国でもビザが必要な国の研究者にとっては、入国が不可能なので、出席も発表も諦めなければならない事態に陥っているらしい。

 他に、目を引いた記事は、イギリスやオーストラリア、それにカナダといった英語圏のコモンウエルスの国々が外国人に門戸を開いているということだった。それらの国々にとって、アメリカへの頭脳流出の流れを自国へと向ける絶好の機会となっている。この機会は、ふだんアメリカに人材を取られている反撃だ、と思ったが、イギリスは雨が多い気候が玉に瑕となっているらしい。

 記事としては興味深かったが、何せ、ネジャーティにとっては自分の身に大きくかかわる問題だし、私もネジャーティのビザでアメリカに滞在しているわけで、こういう場合、見返りも大きいが時としてはリスクになるハイリスク・ハイリターンの分野よりは、少なくても国に害を与えるようなことがほぼないだろう社会科学の方がいいのかも。→ネジャーティ、いっそのこと、社会科学に方向転換するとか? いやいや・・・・。


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