西方見聞録...マルコ

 

 

約束の旅路(ネタばれ注意) - 2007年05月01日(火)

年度: 2005
国: フランス
公開日: 2007/3/10
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
出演:シラク・M・サバハ
   モシェ・アベベ
   モシェ・アガザイ

行け、生きろ、生まれ変われ。

 5月1日ひとりで大阪の第七藝術劇場というところで映画を見てきました〜。以下はその映画評です。ミクシのほうで今どんな映画が良いですか?と聞いていろんな御意見を伺って「これじゃ」と決めていってきました。コレ観てよかったです。ついでに第七藝術劇場の廊下で推薦者のアイラグちゃん(徳島在住)と立ち話も出来てよかったです。

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 母と子の物語。「この国を出て生き抜け、そして何者かになれ。」という母の祈りは生母から、少年を難民キャンプからイスラエルへと導く母へさらにイスラエルの養母へとバトンのようにリレーされる。

 子は血のつながらない二人の母とそれぞれに心を通わせながら、自分の原点である生母への血の出るような思いを募らせ、そしてそれを隠す。

 この物語は母と子の物語であると同時に、移民(難民)とその故郷とホスト社会の物語でもある。イスラエルというホスト社会でエチオピア生まれの少年はまさに体中とげの刺さるような苦難を背負い、生き延びるために死に物狂いで勉強し、人種的な偏見と対決する。しかしこのホスト社会の中に配された差別とともに少年を受け入れ励ます人々の群像にも感動させられる。
 養母と養姉
 おじいちゃん
 ファラシャ(エチオピア系ユダヤ人)の民の宗教的指導者ケス
 ルーマニア系の警官
 後に妻となる少女

 特にルーマニア系の警官が、深夜やけになって警察に出頭し、自分はユダヤ教徒を騙ったので逮捕してくれと叫ぶ主人公の少年に「やけになるな、毎日12人のエチオピア系のイスラエル人が自殺していく。こんなのはおかしい。コレはエチオピア人の問題でなくイスラエルのほうに問題があるんだ。夢はあるか?がんばれ。まけるな」と励ますシーンで涙が止まらなくなった。

 自分は何者で居場所はどこか。主人公同様、ルーマニア系のユダヤ人でフランスで教育を受けたというハイブリットな出自を持つ監督は語る。「コレまで自分のアイデンティティとは何かといろいろ悩んでいたけれど、子どもができたときはっきりとわかった。私の国は私の子どもだと。私の家は私の子どもだと」

 私はこれととてもよく似た言葉を日本とブラジルのハザマでアイデンティティに悩む日系ブラジル人の少女から聞いたことがある。「ナントカ人になりたいのではなく、家族と同じ人間でありたい。」詳しくは下記
http://www.tcc117.org/rec/gallery/displayimage.php?album=1&pos=6
親しい人との関係の中に人は故郷を見出す。何か大きな答えに至る道を示されたように思った。

 この作品の基盤になったエチオピア系ユダヤ人のイスラエル帰還を遂行した『モーセ作戦』だが、作品中は極秘裏に危険を伴い行われた、となっている。そういう時代もあったのだろう。しかし現在はエチオピア系ユダヤ人が暮らすエチオピアの古都ゴンダールにイスラエル領事館が置かれ、エチオピア系ユダヤ人のイスラエル移民の審査をシステマティックに行っているという。移民の流れは連綿と続いている。だがしかし、イスラエルにおけるエチオピア系への差別は厳然としてそこにあり、少子化の進むイスラエル社会を底辺でエチオピア系の人々が支えている。移民の受け入れとホスト社会のありように関して、adaptingについても考えさせられる。

 現在のイスラエルのエチオピア系の人々の移民の流れに関してはhttp://www.nhk.or.jp/special/onair/060129.html こちらに詳しい。


 約束の旅路公式サイト http://yakusoku.cinemacafe.net/


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