西方見聞録...マルコ

 

 

個別の問題と構造の問題 - 2005年12月10日(土)

さてマルコが現在、大学で教えているのは『多文化共生論』というけっこう新しめのカリキュラムだ。
「同一の社会における多様な文化の共存を是として文化の共存がもたらすプラス面を積極的に評価する」というのが多文化主義の主張なわけである。

でで、今年も暮れ行こうとしているわけだが、結構今年はこの多文化主義的な主張に対してチャレンジャブルな事件が多かった。例えば、イギリスにおけるロンドンテロの実行犯がイギリス生まれの移民の2世の少年たちであったり、秋の終わりに起きたフランスにおける野火のような暴動はやっぱり移民2世が起こしたものだった。

そのたびに特別授業をして新聞記事をネタにディスカッションの授業をしたり、フランスの「公空間での平等のために『相違への権利』は私的空間にかぎる」という方針を解説して「多文化主義にもリベラル多文化主義(私的空間で自文化保持を許すけど公的空間ではNG)とコーポレイト多文化主義(公的に自文化の保持がOK)がある」なんて話しに持ちこんだりした。結構、多文化主義の理想を納得的に理解してもらうには大変な一年だった。

 二つの事件は移民を受け入れるホスト社会と移民との相互関係の中で起こった『構造的な事件』であるとマルコは認識している。真の解決のためには犯人の摘発だけではなく、受け入れ社会の側の変革や世界規模でのイスラムを取り巻く状況の改善も望まれる、そんな事件だと思う。

 そこへいくと、最近起こった日系ペルー人の男性が容疑者として逮捕された、女児殺害という痛ましい事件は『個別の事件』という気がする。性犯罪者という人々がどのようなめぐり合わせでそのような人生を歩むことになるのか、マルコは寡聞にして知らない。しかしある一定数そうした人々が社会に存在するのであれば、分母(この場合は在日外国人数。昨年末で外国人登録者数197万人)が増えればそうした人が含まれる可能性と言うのは残念ながら否定できない。

 この事件に接しマルコが思い出したのは『パリ人肉事件』の犯人、佐川氏のことだ。あれもまた日本人だからこそ起こしたという構造的な事件ではなく佐川君という個人による「個別の事件」であったと思う。

 かの事件後、フランスにおいて日本人は佐川氏と同じ日本人であるということで差別されたのであろうか?もし差別されたのであればそれは不当だ。今回の事件で日系ペルー人が差別されるのと同等に不当だ。
 





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