私の下妻 - 2004年08月13日(金) 獄本野ばらの「下妻物語〜ヤンキーちゃんとロリータちゃん」を読んだ。 うむう、面白かった。 なんだかものすごい宇宙的田舎と描かれる茨城の下妻はマルコが大学時代の家庭教師のアルバイトをしに3年ほど通った場所だ。出てくる国道の名前も、いろんなディテールに使われる町の感じも激しくデフォルメされているが基調としてはうまく絡めとってるなって感じ (下妻の人が茨城弁じゃなくて標準語使ってるところが詰めが甘いけど) 。 マルコは毎週水曜の夜、メロン農家を営むおうちの娘の由佳ちゃん(仮名)を中2から高校生まで教えた。マルコの後は同級生や後輩が引き継いでずいぶん長いお付き合いをした。お中元にはマスクメロンの半ダース箱詰めもらった。 由佳ちゃんちは農家なので凄い大きい家でおじいちゃんとおばあちゃんとお父さんとお母さんと妹と暮らしていた。農業はおじいちゃんとおばあちゃんがして、お父さんとお母さんは普段は勤めていたけど休日は農業をし、さらにビーチバレーの男女混合チームでペアを組み、茨城で強豪ペアとして名をはせていた。由佳ちゃんは当時結成されたばかりのSMAPと女子プロレスを愛する花のように美しい少女で、茨城弁もキュートだった。 マルコが暮らす科学の町は周囲の茨城地元民との間に見えないバリアがあるような場所だったんだが、週に1回バリアを乗り越え、ディープ茨城の由佳ちゃんちで勉強教えて、ご飯をご馳走になりにいくのは、科学の都市の中だけで学生時代を終えていく級友たちに対して、ちょっと自慢な部分でもあった。そして福島に自分のルーツを持つマルコにとって下妻の農村文化は自らの基層文化的な匂いのする場所だったのだろう。 微妙に次元をずらしてあるとはいえ、こんな形で懐かしい下妻が取り上げられていて大層笑える。関西出身の作者を通して表現されるディープ・関東はこんな感じか。と東西異文化接触物語としても楽しめた。 どうでもいいが文庫本の表紙は映画版の主役の2人が写ってるのだが、このヤンキーちゃん役の土屋アンナの目つきが大変よろしい。もうイっちゃってるヤンキーさんを上手く表現している。次作も期待している>アンナ。 マルコによる下妻物語解説:異なる文化圏で育った2人の主人公(ロリータ&ヤンキー)がそれぞれの文化の中で極端なエッジな部分に立ってる。エッジであるがゆえに個のあり方として「孤高」と「徒党を組む」と言う正反対の戦略を選択している。それが奇妙な交流の中から、多分同じ異端者同士、マジョリティーとの関係の築き方の部分で、共振して行き、それぞれの異端の異なるベクトルを受け入れ、理解と友情が築かれる。結果として、両者は依然としてエッジなポジションながら、それぞれの「孤高」と「徒党」から少しだけ自由になる。まあそういう一種の成長物語異端児編って感じでしょうか。舞台・人物設定を極端にして、全編ギャグに彩っているのが本作のウリでしょう。 ぜひ夏の読書にお勧めですわ。 ...
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