西方見聞録...マルコ

 

 

血脈−ミトコンドリア・エルザ - 2004年07月27日(火)

1号さん、夏休みである。夏休みといえば宿題である。現在1号さんは、工作・自由研究系の宿題に取り組まれている。そのなかに「アイディア貯金箱」の作成がある。規定は1辺25センチ以下とあるだけであとは子どもたちのオリジナリティーの発揮が求められる課題だ。1号さん1辺25センチ以下の直方体の箱を持ってきてまわりに千代紙をちぎって貼り、完成。所要時間15分。

拍手して完成をたたえる夫あめでお。

、、、みんな、それではあまりにやる気が無いと言うか簡単過ぎないかい?と思いマルコ昨年度の文部大臣賞の作品なんかをインターネットで検索し、1号さんにお見せし、
「ほらみんな1年生でもこんなの作ってるよ。1号ちゃんも受賞目指してもうちょっと工夫してみようよ」
と、かき口説く。
審査風景の写真なんかを興味深げに見入っていた1号は
「でもさ、『おお、何の飾りもついてない貯金箱は初めてだ!』とかいって賞、もらえるかもよ。」

 もらえません。母は断言する。もらえません。

 蝉時雨の中、何とか1号を改心させ、もうちょっとこった芸をさせようと、言葉を選んでいると、デジャブのように20年前の景色がよみがえる。やはり夏休みの宿題に取り組む中学生のマルコ。苦手の家庭科だ。お手軽にすませ、できたよ〜と自慢していると、勤めから帰ってきたエルザさんがそれを見咎め、やり直しを命じる。マルコが応じないと、翌朝マルコの作品は見事なエルザさん制作の作品に生まれ変わって机の上に乗っていた。新学期、家庭科の先生は絶賛してみんなに見せたが、万年家庭科「3」の女、マルコがそんなもん作ったなんて誰も信じていなくて、心が痛かった。そしてその学期、やっぱり家庭科の評価は「3」だったと思う。

 その家庭科の夏休みの宿題の話しでマルコはたびたびエルザさんの過干渉を責めた。エルザさんは「私なんてね変な課題を作ると母親(マルコの母方祖母)に糸ほどかれて、やりなおし!って言われて、それはそれは厳しくやられたわ。母親としてのあの人(マルコ母方祖母)は私よりずっと厳しかったわ。」という反論をなさったりした。

 DNAは父と母と半分ずつ子どもに提供されるが、ミトコンドリアのRNAは女系でのみ受け継がれるという(出典:瀬名秀明著『パラサイト・イブ』)。

 マルコのミトコンドリアはエルザさんがその母、その母、その母とずーっと女系で受け継いできたものだ。エルザさんの母方の女たちはみんななんか濃くてエネルギー過剰な人が多い。出世した人もいる。グレート教育マザーになった人もいる。マルコ自身このごろそのエルザ系の女たちに自分の有り様のルーツを感じたりする。

 今1号さんを目の前に考える。ここで1号さんの貯金箱にやり直しを命じる、あるいはマルコが手を加えると言う行為は、このエルザ系ミトコンドリアの記憶を焼印のごとく1号さんの肩に押し付けることになるだろう。

 やるか?やるまいか?

 蝉時雨はやまない。夏休み終了まであと35日。




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