LOTRの関連本は似た名前が多いので紛らわしい。 公式ガイドとか公式フォトブックとかアートブックとかいろいろあるけれど、 これはブライアン・シブレーの書いた本。表紙はガンダルフとサルマン。 BBCのラジオドラマを制作したことのある筆者は、 映画の製作現場で見たことやスタッフやキャストへのインタビューなどから この映画がどんなふうにできたかを書いている。 内容は多岐にわたっている。四枚組DVDの特典ディスクと重複している部分もある。 三本の映画を作るためにたくさんの人が関わって、たくさんの物が作られ、いろいろな議論が行われた。 しかし映っているのは、ほんの少しだということだ。 映っているものにも、言われて見なければ気づかないような細かい細工がしてあるという。 間違いがない限り誰も注目しない背景のために、スタッフは走りまわっていたそうだ。 物作りの現場はみなそうかもしれない。受け取る立場にいる限り どれだけ多くの手を経て物が作られるかということは見えてこない。 LOTRの三本はその規模が格段に大きかったのだろうと この本を読んであらためて思った。 PJは映画の舞台を自分の故郷であるニュージーランドに求めた。 国をあげてこのプロジェクトを応援してもらったというが それでも、厳しい自然保護の法律をクリアするために 法律の専門家が交渉にあたったという。(それも自分から志願して、というところがおもしろい) 場所が決まり、撮影を行うためには、そのための機材やテントやトイレなどを運ばなければならない。 そのための道路も整備しなければならない。 撮影の場面の季節と実際の季節がずれた場合は、雪を降らせ、 茂った草を(環境に配慮しながら)枯れた色に変える。 衣装や鎧や武器やメイク、背景、小道具、ミニチュア、CG、音楽、 スタッフ、キャスト、スクリプト。宣伝、インタビュー、その他いろいろ。 大小の仕事をこなし、たくさんの人を束ねていく中心に 原作や映画や故郷への愛情があるのは、作品にとっても幸せだが 関わったスタッフにとっても得難い経験だったのではないか、と思わせる。 PJの面目躍如といったところ。
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