unsteady diary
riko



 依存症


去年のいまごろ。
卒論の名目で読み漁っていたたくさんの文章は、どこへ消えたのだろう。
血肉となった、そう思っていた。
けれど、落ちていってはいなかった。
あれらがきちんと融けきっていたなら、今の自分を許せるはずだ。
そんな簡単な問題ではないとわかっていながら、
なにも変わっていないのではないかという思いに焦る。
昇ったつもりの階段は、騙し絵のごとく、地下へのびていたのかもしれない。



あれほど露骨に嫌がられているのに、毎日会社にのこのことあらわれ、できそこないぶりを存分に発揮し、ため息をつかれ、嫌味を言われ、それとなく村八分にされ、人好きのする同期と比較され、残業が多くて給料泥棒だと暗に言われつつ、やっぱり残業せずには終わらず、どうにかこうにか一日を終えて、泥みたいな身体を引きずって満員電車に揺られて帰る。
どこでどうしたらこの悪循環から抜け出せるのかいまだによくわからないまま、週末はひたすら丸くなって眠る。



私がやめたら、きっとみんな幸せになるだろう、とか。
役立たずでごめんなさい、としか思えなかったりとか。
果てしなく思考は後ろ向きで。
だったら、嫌われはしても、文句をつけようがないよう、人一倍役に立つようになればいいんじゃないかとか、
そういう強気は、自分の中のどこを探しても見つからない。


気がつけば、これまで以上にネットの海を彷徨わなくなっていた。
頑張っている人や、肩の力の抜けた人から、遠ざかっていたかった。
同じ言葉が、同じようには感じらない自分に気づいて、かなしかった。
このひとの言葉が好きだと、PCの前で感動して泣いていた自分はもういない。
鈍くなれと願い、そうなったらなったで切ない。
なんだって、変わり続ける。
どんな風に変わるか、が問題で。




金曜日にお昼を偶然ひとりでとることができて、しかも月初だから1時間弱まともに休めて、真っ先にしたのは本屋直行だった。
ふだんは閉店時間を恨めしく仕事しながら迎えるけれど、
真昼間から本を物色できるなんて嘘みたいだった。
箍が外れて1万近く遣ったかもしれない。
すさまじい分量を買ってしまった。
あ、たけこさん、やっと揃っているの見つけたよ。>HARD LUCK
次に本屋に行けるまで本が切れないように、大切に読むつもり。
でも、どんなに好きな本でも読む前に寝てしまうほど、くたくただったりもするのだけれど。
必要な栄養だから、散財する自分を許してしまう。



食費もすごい。
エンゲル係数を出してみたい。
営業の同期も同じようなことをぼやいていた。
毎週2、3万下ろしても、食費と飲み代で消えるって。
その子は、意地でも夕食は家で食べるというひとなので、
私よりはまだ安上がりか。
私の職場の周辺は、本屋街だったり学生の街だったりするから、
食べるところはそこそこあるけれど、なかでも分不相応なものばかり食べている。
だって、安っぽいハンバーガーを15分くらいでもぐもぐしても、
ちっとも気持ちよくならない。
でも、美味しいと感じることさえ麻痺しているんだか、
食べた後、ときどき気分が悪くなる。
というか、何を食べてもあまり変わらないのかも。
それでも食べるし。
決して吐いたりしないけど。


就職前から比べると、半端じゃなく体重が増えた。
就職活動中に増えたぶんもあって、しかも現在進行形。
思わず7つの大罪を思い出してしまうわ。
自分のすべきことができなくて、ただ食い荒らしているだけの生きものなら、ただの醜悪な肉の塊じゃないか、とか。
そういう類の、罪悪感。
だからって、それに押しつぶされるほど純粋でもないし、壊れちゃいないけど。


いっそのこと壊れたいのか。
正当に壊れたら、堂々と逃げ出せるとか、思っているのだろうか。



古株の代理店で、しばらく病気を患っていたひとがいた。1ヶ月ほど前に電話を受けたときはそれなりに普通に話していたひとが、亡くなった。
私が配属されたときにはもう、癌で入院していて、いつも機嫌が悪くて、電話を取りたくない代理店ナンバーワンだった。
ばりばり働いていた強いひとが、やせ衰え、弱気になる。
現実の病気は大変で、強いひとでさえ弱くなるほど大きくて、痛いものなのだろうと思う。
悪性の病気で何度も何度も入退院を繰り返した挙句、
疲れ果てて、ものも言わない身体になるひとたち。


だから本当の病気になりたいわけではない。
そんな化け物と闘う勇気もない。
ただ、頑張らなくていい程度の、なまぬるい病が欲しいだけ。
でもそれは、誰に言い訳をするための、理由なんだろう。


2002年09月07日(土)
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