unsteady diary
riko



 化ける


学園祭期間中は、ライブにも行けず、ほかもほとんど参加せず、
だらだらっと過ごした。
去年は合同ゼミ合宿と重なって参加しなかったし、
1,2年はサークルの端っこで地味にうごめいていただけ。
4年間、ずっとこんな感じ。

ぼけっと見てたテレビで、うちの学園祭のミスコンを見て。
あら、こんなのやってたんだ、とはじめて知った。
出場者のなかで一押しだった美人がミスに選ばれ、納得。
めちゃくちゃビューティフル。
将来どこかのアナウンサーか女優さんにでもなるかもしれないので、
名前覚えておこうと思ったり。
それにしても、ミスコン出場者のほとんどが文系学部出身なのはなぜなんだろう。
美容やファッションにかけるエネルギーと勉学にかけるエネルギーは反比例するってことなのか。
だけど、内定者懇談会で会った東大生男子だって、
中身はかなり遊びまわってる軟派なタイプが多かったので、
いまどきどこでも同じなのかなあ、と思ってみたり。

ちなみに、
「ふだんどこで遊んでんの?」なんて聞いてくる男は、苦手。
そこで千葉の奥地だとか答えても、ねえ。(笑)
そもそも私、なにを夜遊びと言うのかわからないし。
大学が赤坂の近くであろうとも、
足を踏み入れたこともない。
別にそれでいいじゃん、と思いつつも、
まるっきり無関心になれるわけでもなく、
内定者の子たちの持ってるブランド品やメイクをチェックしてしまう、
微妙なところ。




メイクって、最近はもう高校生か中学生から始めるらしいね。
私も、最初の口紅を買ったのは、中3だった。
忘れもしない、セザンヌの300円くらいのやつ。
化粧品コーナーに近づくのさえ恥ずかしいことで、
だけど、魔力みたいなものを感じて、
一度口紅というものを手にしてみたくて、
マツキヨでプラスティックの見本の色だけを頼りに買った。
見本のケースのなかに本物の口紅が入ってて、
色が試せるようになってることさえも知らなくて。
結果は、大失敗。
かなり赤みの強いピンクは、ファンデで隠すことを知らないころの汚い肌色にはまったく合わなくて、ピエロみたいだった。
ティッシュでごしごしこすって
その口紅は、机の引き出しの奥にしまいこんだ。
母に絶対に見つからないように。

そして私は、一生化粧の似合わない女なんだと思い込んだ。
思い込みの激しさは、いまも変わってないけど。


メイクにはテクニックが必要だと知ったのは、
それから何年もあとだった。
その間も、こっそり母のファンデーションを試して肌色修正を試みるも、
ファンデーションを塗ったらもっと汚くなって、へこんだ。
この汚い肌色をどうにかできる最後の望みが、
私にとって、ファンデーションというものだったので。

雑誌というものは、偉大だ。
それこそおかめみたいに真っ赤になる頬が、
コントロールカラーで消せるかもしれない、と知って
どれだけほっとしたことか。
当時としては高額の2500円を投じて、
わき目も振らず、エテュセのイエローのコントロールカラーを買った。
まじめに感動したね、あのときは。
いまじゃ、オイルフリ−のこれでは乾燥してしまうので使えないけど。
あとはマスカラ初体験のとき。
はじめてつけたとき、ああメイクしてもいいんだ、と思った。
この私にだってメイクする意味はちゃんとある、って。

私は別に肌が汚かったわけではなかったらしい。
だけどそんなことも知らずに、なんだかよくわからないけど必死でいろんなものを隠そうとしていた。
にきびがあるわけでもなく、年齢相応のもち肌で、
確かに色白ではないけれど、そこそこ肌理も整っていたらしいのに。
ほんとうに汚くて汚くてしょうがないと思っていた。
明るい色を着られなかったのは、顔色が気持ち悪いと思っていたからもある。
母や祖母にもそう言われてきたし、
ほかの子たちに囲まれて、気持ち悪い(存在が、だと思う)と言われたこともあったけど、
私がすごいと思うのは、それを自分でも信じていたことだ。
過去形、でもないけれど。


コンプレックスなんて誰にでもあるよ、と大人は言うけれど。
欠点を隠すんじゃなく、長所を生かすメイクをしようよ、と雑誌には書いてあったけど。
そんなの、なにも響いてこなかった。


氷室冴子さんが、どっかの本のあとがきで書いてた。
少女のすっぴん肌はそれだけできれいなのに、
汚い異物を塗りたくって隠してしまう。
だけど、そうした犠牲の上にする化粧こそが、
あやしくて、きれいなんだと思うって。


ガングロはもう消滅したようだけど、
ゴージャス系の、どんどん気持ち悪いくらいに濃いメイクになってゆく
年端も行かない女の子たちの気持ち、
少しわかるような気もするんだよね。

私だって、いわゆる万人受けする爽やかなメイクは大好きだけど、
そういう爽やかなナチュラルメイクが似合うのは、
はっきりいって素材を生かしてもっと綺麗になれる人で。
嫌いなところをどうにかしようといじりまくると、
どんどん濃くなってゆくのさー。
まわりからどれだけ言われても、
それはもう、彼女たちの、もしくは私の、鎧なんだよね。


ちなみに。
私はまつげが長いと言われることがあるけれど、
それはメイクをしているからであって、けっきょくは嘘。
マスカラつけて、まつげくるん、して。
嘘をついて、少し自分にプラスを増やして、
それでやっと、平気な顔をしていられるようになる。
そういう鎧。


ひそかな野望は、
誰かにまつげ長いね、と言われたら。
ありがとう、って、さらりと返してみたい。
自分の唯一強調できる場所なんだから、ちゃんと大事にしてあげたい。
だけどついつい、
「だってマスカラしてるし…」とか言い訳してしまう
小心者の自分が憎い。(笑)


2001年12月01日(土)
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