というか、ただの朝。
おかんが田端に住んでる兄にわたすものがあり、
同時に受け取るものもあると言うのである。
「あんた、ちょっと会ってきて」
なんか変。
で、夜。兄貴と電話して気の乗らない待ち合わせ交渉。
おかんは、秋葉原で待ち合わせにすれば絶対来る、と、
かなりの自信をもって言い張るのである。
でも私は、定期があって楽な東京駅がいい。
受話器のむこうで兄貴は言った。
「田端まで来い」
田端は東京駅から山手線にのりかえて、
上野のほうへずっと行ったところにある。
なんか変。
必死に抵抗すると、兄貴は言った。
「じゃあ秋葉原にしよう」
「なんでだよ。秋葉原は定期つながってないからやだよ」
「だってさあ、その日休みだから、
そのまま俺が遊びに行けるところがいい」
「ばかな! 東京駅までがんばれよ!」
「え〜〜。人っていう字はさあ……、ていうか空って青いから、
じゃあそうだ新宿まで来い」
そう。変。
というか、東京駅までの数駅の移動を、
そんなにまでして拒む、うちの兄貴ってなに?
何がそんなにつらいのか、実の兄ながらわけわからん。
それでさっかはがんばった。
「秋葉原まで切符買って、東京駅にくればいいじゃんか。
それで改札の中で会って、君は秋葉原に行けばいいじゃんか!」
兄貴は黙った。
こいつ。
「おお……」
驚いてやがる。
兄貴は喋った。
「新しい時代の幕開けってかんじ?」
こいつひょっとして、ものすごく頭悪い?