ビー玉日記
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2000年12月09日(土)  オムニバス「満願」について

最初にお断りしておきますが、BOXMANさんのオムニバス企画出品作「満願」を読んだ後にお読みください。
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皆様に立派な感想をいただいて、ひどく恐縮しているのだけど、
あれは〆切に追われて苦し紛れに生まれた産物です。

もとは全然違うものを考えていたので、自分でもあんなものが生まれたことが驚き。
今回は思いつきから脱稿までが速かった。平日の深夜だったから(笑)。
以下、私の覚書。


「ピエロ」という課題で思い悩んでいるときに、ふと現代じゃないものが書きたくなって思いついた話。

主人公は深草少将。
「あの人」は小野小町。
絶世の美女・小野小町に求婚した深草少将は「100日続けて通うことができれば添いとげる」という言葉を信じて毎晩彼女の家に通う。そして、ちょうど100日目に衰弱死する、という伝説に基づいて書いた。

図書館に行く時間がなく、web上で資料を探した。
深草少将の死因に関しては、衰弱死というのが一般的だと思っていたが、事故死というのもあり、今回は事故死説をとってあのような結末になった。
小野小町の送った刺客に殺されるということも考えたものの、あまりにもむごいのでやめた(笑)。

当時小野小町は小野の里という都から離れたところに住んでいて、歩いて通うのは大変だったらしい。
(本当は距離やかかる時間を調べるべきだったが、そこまでいかなかった)

実話かどうかは定かでないけど、似たようなことはあったんじゃないかと思う。
または、竹取物語が小野小町伝説に転じたのかもしれない。
欲しいものを得るために試練があるというのは常道で、簡単に手に入れてしまったらお話としては面白くない。

わざわざ時代物っぽくしたくなかったので、主人公の名前も明らかにせず、ヒントだけ与えた。
前から歴史小説は好きで、書きたいと思っていることはいろいろある。
本当は相当取材をしないといけないんだけど……。
今回は短いのでボロが出ない程度に押さえて書くことでそれを逃れた。やれやれ。

この題材は能にもいくつか使われているし(「卒塔婆小町」、「通小町」など)、三島由紀夫も書いているので、私などが扱うのはおこがましい限りなんだけど、Web上ってことで気軽に使ってみた。

もっと笑えるピエロにしたかった。
哀しいものになってしまったのは誤算。
いくらなんでも笑えない。
でも今はこれはこれでよかったと思う。

美しいというのはそれだけで罪だ。
たとえ中身がどんなにすばらしい人物であっても。
魔性の女の話はまた別に書いてみたい。


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